【サルでもわかる】Bluetoothのコーデックとは?代表的なコーデックもわかりやすく解説
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
私自身の経験として、Bluetoothのコーデックについて学ぼうと思った際、体系的にまとめられていて、且つ、非エンジニアでもわかりやすい情報が見つけられず、困ったという経験がありました。そこで今回は、前回の「プロファイル」に引き続き、私自身が学んだ情報を整理して、Bluetoothのコーデックとは何か?その役割、代表的なコーデック、今注目の最新コーデックについて解説します。
Bluetoothのコーデックって何?その役割とは?
コーデック【Codec】
コーデックとは、符号化方式を使ってデータのエンコード(データを他の形式に変換すること)とデコード(エンコードされたデータを元の形式へ戻すこと)を双方向にできる装置やソフトウェアのことを示します。
今回はコーデックをよりわかりやすく解説するため、よく話題になる音声コーデック(オーディオコーデックとも呼ばれる)を取り上げます。
Bluetoothの音声コーデックとは、音をどういう方法で圧縮して伝えるかという『音の圧縮方式』のことです。これによって音質・遅延に影響を与えます。
前回のプロファイル解説のおさらいですが、Bluetoothには3つのLayerが存在し、プロファイルは一番上位Layerに位置します。そのプロファイルの中に、音楽再生プロファイル『A2DP』があるとお伝えしました。
今回解説する音声コーデックは、音楽再生プロファイル『A2DP』のさらにその中に含まれます。
音声コーデックの役割とは?
Bluetoothの音声コーデックの役割とは、圧縮されていないデジタルオーディオストリーム(デジタルオーディオ信号の流れ)を大幅に圧縮し、Bluetoothで伝送し、再生時に解凍することです。
『A2DP』では規格上必須なコーデックとして『SBC』が定められています。また、『SBC』以外のオプションとして『AAC』、『aptX』や『LDAC』などの『より高音質にしたい場合に使っても良いコーデック』というものが定められています。
そのため、デバイス間で通信する際、まず対応コーデックは何か、という情報が相互にやりとりされ、その上で、通信できるもの同士(同じ種類)のコーデックで伝送されることになります。
コーデックはデバイス同士が喋れる『標準語』と『方言』のようなもの
前回の記事で、Bluetoothのプロファイルは各デバイスが喋れる『言語』のようなものと例えましたが、Bluetoothのコーデックを例えて言うなら、各デバイスが喋れる『標準語』と『方言』のようなものと表現できます。
お互いに喋れる言語として日本語(A2DP)は一緒でも、話し方は人それぞれ出身地や生まれ育った環境によっても異なりますが、基本となる標準語であればほとんどの人が理解できます。
つまり、標準語として必ず搭載されているのがSBCであり、さらに、同じ方言に変更することでより円滑に深いコミュニケーションをしたい場合には、『aptX』のようなオプションのコーデックも準備されています。そのため、『より音質が良く、遅延しない音楽再生の実現』が可能になります。
代表的な音声コーデック一覧
代表的な音声コーデックとその特徴を一覧にしてみました。
種類 | 特徴 |
SBC | 必ずサポートしなくてはならない必須コーデック |
MPEG-1,2 Audio | MP3のフォーマット、製品化にライセンスが必要なためか、普及せず |
MPEG-2,4 AAC | AACのフォーマット、製品化にライセンスが必要だが、Appleが推奨しているためそれなりに普及 |
ATRAC family | ミニディスクやRealAudioなどのためにソニーが開発したコーデック、種類が多く古いためか、普及せず |
Vendor Specific A2DP Codec | ベンダ独自に開発したコーデック、QualcommのaptXやハイレゾ音声の伝送可能なソニーのLDACが有名、QualcommがBluetoothチップを扱っている影響からかaptX関係の採用製品が多い |
今注目のコーデック『LC3』
これまでBluetooth Audioの機能はClassic Audioしかなく、その中の標準仕様(コーデック)としてSBCが存在していました。しかし、Bluetooth 5.2からLE Audioという新しい機能が登場したことで、Bluetooth Audioは2つのモードに分かれました。
そして、このLE Audioの登場により、新しいAudio系コーデックである『LC3』(Low Complexity Codec)が導入されました。そこで、標準コーデックであるSBCと比較しながらLC3について解説をしていきます。
まず、SBCでは高音質のデジタルオーディオストリームを345kbpsまで圧縮可能です。
一方、LC3もSBC同様に高音質のデジタルオーディオストリームの圧縮を行いますが、より小さい、192kbpsまで圧縮が可能です。
このように、SBCとLC3では圧縮に差があることがわかりましたが、音質についてはどれくらい差が出てくるのでしょうか?これについては、Bluetooth SIGが提供しているデータを見ながら解説していきます。
音質比較
まず、~240kbps、~345kbpsの範囲ではSBCよりLC3の方が音質に優れていることが確認できます。SBCでも高い音質性能がありますが、LC3はさらにそれを上回っています。
また、SBCの半分以下となる160kbpsという低いデータレート時でも、LC3はSBCと同じレベル以上の音質を確保できていることが確認できます。低ビットレートで製品化されたBluetoothオーディオデバイスは消費電力を抑えられるので、よりバッテリーの持続時間が長く、且つ高音質な音楽転送が期待されています。