導入事例から学ぶビーコン基礎講座/位置情報がもたらすもの
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
BluetoothのビーコンはBluetooth Low Energy(以下、BLEと略す)が策定された2010年以降から登場した比較的新しいテクノロジーです。課題解決のキーテクノロジーとして期待され、これまでBtoB、BtoCに関わらずあらゆる業種にて実証実験などが行われてきましたが、残念ながら未だ大きな普及には至っていません。
しかしながら、ここ最近でもビーコンに関するニュースは流れてきており、一部では課題解決に活用されている実例もあるようです。そこで今回は、実際にサービス化されているビーコンの導入事例を学ぶことで、ビーコンを活用した位置情報がもたらす価値について解説します。
ビーコン(beacon)とは?
Bluetoothのビーコン
まずはビーコンについて解説した以前の記事のおさらいです。
ビーコンとは、電波を通じて不特定多数に向けて情報を発信する仕組みのことです。Bluetoothのビーコンは省電力のBLE通信を採用することで、コイン電池でも一年以上電力を維持できるようになったため、BLEビーコンを使ったソリューションに大きな期待が寄せられました。代表的な用途としてはマーケティングへの活用が挙げられます。専用アプリをインストールしたスマホがビーコンの電波(ID情報)を受信すると、ID情報に紐づいたコンテンツがクラウドからスマホ画面にプッシュ通知されるというものです。ビーコンに紐づいたコンテンツは顧客サービスや販促に活用され、さらにビーコン電波の受信履歴をトレースすることで店内行動の可視化も可能となります。
つい先日も、凸版印刷株式会社が提供している流通・小売業向けアプリプラットフォーム『お買い物アプリ』の集客機能が強化されると発表がありました。これは新機能としてビーコンを活用した店内行動データの可視化や来店状況に応じたキャンペーン抽選機能が追加されるというもので、これも仕組みとしては前述した内容と基本的には同じです。
凸版印刷株式会社
サービス化されているビーコンの導入事例
出席管理システム(株式会社東和エンジニアリング)
教室に設置したビーコンで教室にいる学生を検知し、学生のスマホに出席登録ページを自動配信します。学生は、受信した出席登録画面からスムーズに出席登録を行うことができるサービスです。
株式会社東和エンジニアリング
ビーコンが解決した課題とは?
このビーコンを使ったサービスでは、学校側が持つ2つの大きな課題を解消しました。
一つ目は、学校側の出席管理の煩雑さを解消した点です。従来、学校の先生方は授業以外の様々な仕事を受け持っていますが、授業毎に発生する学生の出席管理は大きな負担となっていました。紙の出席簿からPCへの転記作業は非常に大変な作業でしたが、これがデジタル情報として一括で取得・管理できるようになったため、先生の負担が大きく軽減されました。
二つ目は、学生の出席不正や代返登録を解消した点です。最近では『ピ逃げ』という言葉があるように、出席登録だけして授業には参加せずに退席するような問題がありました。しかしながら、このサービスでは教室に設置されたビーコンの電波を受信し続けているか否かで学校側は教室の滞留時間を計測できるようになったため、学生側の授業に対する姿勢を改めるキッカケとしても活用されています。
まとめ
ビーコンのもたらす価値は何でしょうか?
私個人としては、ビーコンの位置情報そのものではなく、過去の実績に応じてターゲットユーザーごとへ最適な個別アプローチが可能になることや、連続的な位置情報の積み重ねによる新たな価値創造こそがビーコンのもたらす価値であると考えます。ここまで解説したとおり、ビーコンは広く普及はしていないものの、従来から存在する課題の解決方法を提供できれば、ビーコンが活用され、サービスとして世の中に導入されています。実際に活用されるビーコンサービスというのは「ビーコンが使えるか?」という観点ではなく、出席管理の例のように課題解決のための手段としてビーコンが活用されていることが重要です。
マーケティングでの利用においては店舗側は販促に活用したいという動機がある一方、ユーザー側は専用アプリをインストールしなければならないという障壁があります。そこで普及を促すためには、これまでカード型だった会員カードをスマホアプリに移行することで、ユーザー側にアプリダウンロードのメリットを感じてもらう必要があります。
また、出席管理システムも一見生徒側にはメリットがないようにも思えますが「単位を取るためには利用するしかない」という状況が利用する動機になります。つまり、ある意味一種の強制力が働きやすい状況を作ることも、ビーコン普及のカギになると考えています。