【超入門】BluetoothのClassとは?Classと通信距離との関係性は?
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
日頃お客様とお話をしていると、BluetoothのClassについて、正しく理解できていない方々がいらっしゃいます。そこで本日はClassに関する基本的な知識と、Classと通信距離との関係性について解説します。
BluetoothのClassとは?
Bluetoothではデバイスの最大送信出力に応じて分類わけが定義されています。これを『Power Class』といい、略して『Class(クラス)』とも呼ばれます。
Classによる分類わけはBluetooth ClassicとBLEで異なり、Bluetoothデバイスがサポートする最大電力設定(単位:mW)、または、送信出力(単位:dBm)に基づき、次のように定義されています。
Bluetooth ClassicのPower Class
Bluetooth ClassicのPower Classは全部で3つに分類されています。
Power Class | 送信出力の要件 |
Class 1 | 100 mW(+20 dBm)≧ 送信出力 > 2.5 mW(+4 dBm) |
Class 2 | 2.5 mW(+4 dBm)≧ 送信出力 > 1 mW(0 dBm) |
Class 3 | 1 mW(0 dBm) ≧ 送信出力 |
BLEのPower Class
BLEのPower Classは全部で4つに分類されています。Classicと比較すると、同じPower Classでも送信出力に違いがあります。
Power Class | 送信出力の要件 |
Class 1 | 100 mW(+20 dBm) ≧ 送信出力 > 10 mW(+10 dBm) |
Class 1.5 | 10 mW(+10 dBm) ≧ 送信出力 > 2.5 mW(+4 dBm) |
Class 2 | 2.5 mW(+4 dBm) ≧ 送信出力 > 1 mW(0 dBm) |
Class 3 | 1 mW(0 dBm) ≧ 送信出力 ≧ 0.01 mW(-20 dBm) |
この表に従ってClassを定義する場合、例えば弊社BLEモジュール『LINBLE-Z1』の送信出力は+4 dBmのためClass 2に相当、Long Range対応BLEモジュール『LINBLE-LR1』の送信出力は+8 dBmのためClass 1.5に相当します。参考にはなりますが、Bluetooth Classicとは?BLEとは?その違いについて下記の記事で解説しています。
Classと技適との関係性
一方で、日本でBluetoothデバイスを使用する際には技適(日本の電波法)に準拠する必要があります。現状、日本の電波法にあてはめると、Bluetoothデバイスの送信出力(空中線電力、または伝導電力)は以下の基準内に収めなくてはなりません。
- Bluetooth Classic:3 mW/MHz以下(1MHz当たりの電力として規定)
- BLE:10 mW以下(全電力として規定)
- 但し、量産のバラつきで+20%までは許容されているが、意図的に+20%上げた設定値をもたせることは不可
ClassはあくまでもBluetoothのルールであり、実現可能な最大送信出力はデバイスを使用する国や地域の電波法によって異なります。また、Bluetooth ClassicとBLEでも基準が異なるので注意が必要です。
Classと通信距離との関係性は?
お客様とお話していると『Classと通信距離』の関係性について、誤解をされている方がいらっしゃいます。このパートではよくありがちな誤解を例に挙げ、Classと通信距離の関係性について解説します。
よくある誤解①「通信距離ってClass 1は100m、Class 2は10m、Class 3は1mだよね」
まずは、通信距離という言葉について。Classに関する情報の中では『到達距離』と『通信距離』を混同して使用していることがあります。しかしながら、『到達距離』と『通信距離』の意味は大きく異なります。
『到達距離』とは、やり投げのようなイメージで単一方向に対して電波が届く距離を示しています。一方、『通信距離』とはキャッチボールのようなイメージで双方向に対して電波の送受信を繰り返せる距離を示しています。つまり、『到達距離』は送信側の出力が大きければ遠くまで飛ばせるのに対し、『通信距離』は双方の出力が強くなければ距離が伸びません。
さらに『通信距離』は通信仕様や環境、通信要件(データ通信ができるかではなく、接続が維持できるかどうか?など)によっても異なります。
大前提ですが、Bluetooth SIGがClass毎に規定しているのは『送信出力』のみであり、通信距離は定義していません。
つまり単純に「Class1だから100m」「Class2だから10m程度」と言えるわけではなく、『Class 1は100m、Class 2は10m、Class 3は1m』というのは都市伝説的に言われているに過ぎません。
だからこそ重要なのは「実環境での実測」であり、机上での通信距離算出は非常に危険です。
そこで、通信距離に関する実データを基に、机上での通信距離算出が非常に危険な理由をお話していきます。
【危険な理由】通信仕様だけでも大きく異なる
下記のグラフはBLE Class 1.5の通信距離計測結果のデータです。1M PHY、2M PHY、Coded PHYそれぞれの計測結果ですが、選択するPHYの条件を変更するだけで、通信距離が100m以上異なることが分かります。
Bluetoothのバージョン、Bluetooth 5.0以降からの追加機能であるCoded PHYを選択することで長距離通信が可能になりました。
【危険な理由】同じ通信仕様でも通信環境によっても大きく異なる
下記グラフもBLE Class 1.5の通信距離計測結果ですが、PHYが同条件だったとしても、通信環境(計測場所)が異なるだけで、通信距離が50m以上異なることが分かります。
よくある誤解②「Class 1モジュールを使えばClass 1の通信ができるよね」
双方向通信を行う上では対向機(通信相手)の性能も重要です。例えばBLEモジュールを搭載したBluetoothデバイスとスマホとのBluetooth通信の場合、BLEモジュールの性能はもちろんのこと、スマホ側の性能も重要になります。
仮にBluetoothデバイス側がClass 1の性能を持っていたとしても、スマホ側の性能がClass 2レベルであれば、送信出力レベルが不釣り合いになり、期待する性能が発揮されません。
このようにClassだけで通信距離を判断することは難しく、通信の仕方や環境、対向機の選定などが重要になります。