【保存版】無線通信規格7つの特徴を一覧表で比較してみました
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
現在、世の中にはさまざまな無線通信規格が存在しているため、「自社製品にはどの無線通信規格を選んだらよいのか?」「無線通信規格それぞれでどんな特徴をもっているのか?」といったお問合せを受けることがあります。
そこで今回は、特に産業機器分野でよく名前の挙がる無線通信規格を取り上げ、それぞれの特徴を紹介し、後半では定量データを用いて各無線通信規格を比較解説します。
主な無線通信規格とその特徴について
今回取り上げるのは産業機器分野でよく名前の挙がる以下の無線通信規格です。
- Bluetooth(BLE)
- Wi-Fi
- Thread / ZigBee
- セルラー型LPWA(NB-IoT、LTE-M)
- 非セルラー型LPWA(Sigfox、LoRaWAN)
それでは順に解説していきます。
Bluetooth(BLE)
2.4GHz帯ISMバンドで動作する低消費電力無線通信規格です。長年に渡り改良を重ね、現在ではさまざまなニーズに応えるため、通信範囲、通信形態において非常に高い柔軟性を実現しています。例えば、通信距離を伸ばすための方法も『Coded PHYが選択可能』であったり『Tx Power設定が容易』であったり、選択肢は一つではありません。また、通信形態においても、『キーボード・マウス』『ヘッドフォン』『カスタムデバイス』など様々な機器向けのサービス・プロファイルが用意されています。
また、Bluetoothには大きく2種類の規格が存在します。Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energy(BLE)です。Bluetooth Classicは、ストリーミングアプリケーション、特にオーディオストリーミングで今でも広く使用されている規格です。一方、BLEはその低消費電力性を活かし、機器間のデータ通信頻度が低いアプリケーションを得意としており、スマートフォンやタブレット端末、PCなどに広く普及しています。
主な用途
- 健康機器やフィットネス機器
- スマート照明システム
- リアルタイム位置情報システム
- 屋内ナビゲーション
Wi-Fi
IEEE802.11規格に準拠した無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)の商標名を指します。2.4GHzと5GHzのISMバンドで動作するのが一般的ですが、新しいバージョンでは他の周波数帯も対象としています。Wi-Fiには多くの種類があり、Wi-Fi Allianceではバージョン番号システムを採用しています。特に最新のWi-Fi 6は、より長い距離、より速いスループットでさまざまなニーズに対応できるバージョンとなっています。
- Wi-Fi 1(802.11b)
- Wi-Fi 2(802.11a)
- Wi-Fi 3(802.11g)
- Wi-Fi 4(802.11n)
- Wi-Fi 5(802.11ac)
- Wi-Fi 6(802.11ax)
Wi-Fiはデバイスがインターネットへ直接接続する手段として最も普及している無線規格である一方、低消費電力とは無縁であり、小型バッテリーで長時間稼働を要するアプリケーションやデバイスでの利用は限定的と言えます。
主な用途
- 大容量ファイルの転送
- ビデオストリーミングなどの広帯域データ転送
Thread / ZigBee
Thread / ZigBeeは、低消費電力と低データレートを特徴としています。よって、主に低消費電力を維持しながら近距離で、且つ少量データの無線通信に適しています。
主な用途
- スマートホーム空間における無線制御
- 監視アプリケーション
セルラー型LPWA(NB-IoT、LTE-M)
NB-IoT(Narrow Band IoT)とLTE-M(LTE Cat-M1、Long-Term Evolution for Machines)は、いずれも携帯電話ベースの無線通信規格として3GPP(スリージーピーピー、標準化プロジェクトのこと)によって開発された無線通信規格です。この二つの技術は、他の5G技術との共存を可能にすることで、長期的な5G・IoT戦略に不可欠な存在として位置づけられています。
両者の主な違いは、速度(LTE-Mの方が高い)と遅延性(LTE-Mの方が低い)です。NB-IoTは低消費電力で帯域幅を必要としないシンプルなアプリケーションに適しており、一方、LTE-Mはデータレートが高く、リアルタイム、かつ、データ欠損が許されないような厳しい環境下のアプリケーションに適しています。
主な用途
- NB-IoT:スマート農業、スマートシティ、スマートメーター
- LTE-M:物流、ヘルスケア機器、車載用アプリケーション
非セルラー型LPWA(Sigfox、LoRaWAN)
SigfoxはフランスのSigfox社が提供していましたが、現在はシンガポールのUnaBiz社が事業を引き継いで展開しています。当初運営元の拠点がヨーロッパにあったことから、Sigfoxは特にEU地域での普及が進んでいます。LoRaWANは、LoRa Allianceによって維持されているオープンな無線ネットワークプロトコルです。どちらも低消費電力でありながら、機器間の長距離通信を可能にしています。
ローラワンともロラワンとも呼ばれますが、この動画ではロラワンと呼びます
主な用途
- Sigfox:スマートシティ
- LoRaWAN:スマートメーター、スマートシティ、資産追跡
無線通信規格7つの特徴を一覧表で比較してみました
前述した無線通信規格をいくつかの項目にまとめ、比較した結果が以下の表です。なお、数値はあくまでも理論値、または、ベストケースの値になります。
通信距離 | 通信速度 | 消費電力 | モジュールコスト | |
---|---|---|---|---|
Bluetooth | 10 – 300 m | 125 kbps – 2 Mbps | 低 | 低 |
Wi-Fi | 15 – 100 m | 54 Mbps – 1.3 Gbps | 中 | 中 |
Thread / ZigBee | 30 – 100 m | 20 – 250 kbps | 低 | 高 |
NB-IoT | 1 – 10 km | ≦ 200 kbps | 低 | 高 |
LTE-M | 1- 10 km | ≦ 1 Mbps | 中 | 高 |
Sigfox | 3 – 50 km | ≦ 100 kbps | 低 | 低 |
LoRaWAN | 2 – 20 km | 10 – 50 kbps | 低 | 中 |
【要注意】万能な無線通信規格はない
比較表を見るとわかるように、各無線通信規格にはそれぞれ一長一短があり、全ての項目において万能な無線規格はありません。比較的バランスの取れたBluetoothであっても、あらゆる無線通信用途に適しているわけではありません。
求められる用途によって各無線通信規格の優位性は変わってきます。例えば、Threadはスマートホーム分野での利用が想定されていることから、当然スマートホーム分野での無線通信に適した技術となっています。用途に応じた無線通信規格の選定が重要です。
また、仮にBluetoothを選んだとしても、「どんなBluetoothモジュールを搭載するのか?」も重要です。比較表のデータはあくまでもBLE全般の情報であり、搭載するBluetoothモジュール次第で大きく性能やコストが変わってきてしまうからです。