チップベンダーが教えるBLEデバイス省電力化で抑えておきたい3つのポイント
みなさん、はじめまして。オンセミの大久保と申します。メーカーエンジニアの無線化を支援するため、ムセンコネクトの無線化講座で解説記事を掲載させていただくことになりました。
今回はチップベンダーの立場から「BLEデバイスの省電力化で抑えておきたいポイント」について解説します。
会社紹介とプロフィール
まず最初に弊社オンセミの概要と私の自己紹介を簡単にさせて頂きます。
オンセミは1999年にモトローラのディスクリート部門を基軸に設立、2000年に株式を公開した会社です。
未来を見据え成長の見込める分野の会社、部門を吸収して成長を続けており、お陰様で日本のお客様にもパワー半導体とイメージセンサ製品におきましては広く認知頂いております。
2021年にブランド名称をオン・セミコンダクターからオンセミ(onsemi)に変更し、「インテリジェントなパワー&センシング・ソリューション」をご提供すべく活動しており、「S&P 500 インデックス」「Nasdaq-100 インデックス」にも含まれております。
私、大久保の簡単な経歴ですが、社会に出てからずっと半導体に携わり35年以上となります。
国内半導体メーカーでLSI設計エンジニアとして勤め、CAD部門での設計支援や、二次電池開発部門での回路設計、香港での駐在の経験を積み、事業統合を経て、現在は商用およびインダストリアルアプリケーションに軸足をおいたお客様サポートをさせて頂いております。
設計部門に所属していた時にも超低消費電力の「極Low」製品の開発に携わり、製品サポートでも超低消費電力なDSP、BLE等を扱っております。
さて、気になっておられる方もいると思いますが、Bluetooth SIGより「アンビエントIoT:Bluetooth® IoTデバイスに新たなクラスが登場」という市場調査レポートが出されています。この記事ではBluetooth SIGのレポートで定義されているアンビエントIoTに対応するデバイスを開発するために、BLEデバイスにおける省電力化のポイントをご紹介できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
アンビエントIoTとは何か?
Bluetooth SIGのレポートにはアンビエントIoTの定義が以下のようにされています。
アンビエントIoT(モノのインターネット)とは、電波、光、運動、熱など、周囲に存在する環境エネルギー源からエネルギーを取り込み主な電力源とする、新しいクラスのIoTデバイスです。
これを見ると私はエナジーハーベストデバイスのことか、と思いました。
Bluetooth通信技術を使ったデバイスは商用電源で動くものもありますが、やはり電池駆動のものが多いです。特に低消費電力無線技術であるBLEが登場してからは電池駆動で無線通信を行うデバイスが増えて来ました。
ただし、ここで注意しなければいけないのは、従来のBluetooth ClassicよりBLEの方が低消費電力動作をするのですが、BLEならどのSoC(どのICベンダーのチップ)でも同じレベルの低消費電力動作をするのでは無い、ということです。例えていうなら、F1のレギュレーションでレースを行っても速い車と遅い車があるようなことと同じです。すると同じ容量の電池を使っても動作時間に差が出てくる訳ですが、エナジーハーベストデバイス(アンビエントIoT)になると、限られた供給電力では消費電力が大きいために、安定に動作できないものも出て来そうです。
レポートでアンビエントIoTは従来のデバイスでは実現できない方向へのIoT拡張に伴いさらなるニーズに応えるものだと紹介されていますが、その特徴が以下となります。
- メンテナンスフリーのデバイス
電力供給やバッテリー交換を必要とせず、自律的な設定での実装が可能なデバイス - 複雑さとコストを抑える
より低コストでシンプルなデバイス - 持続可能なデバイス
バッテリー駆動での寿命を限りなく延ばす、あるいはバッテリーを完全に取り除いたデバイス
バッテリー駆動での寿命を限りなく延ばすためには?
バッテリー駆動での寿命を限りなく延ばすためには、BLE SoCがいかに低消費電力動作をするか、が鍵となってきます。BLEはできるだけ低消費電力動作をするように考えられていて、さっとデータのやり取りをしたら、しばらくの間は黙って待機する仕様となっています。なんとBLEデバイスの寿命期間の98%は寝て過ごしています。従って起きて働いている時(送受信時)に低消費電力動作をすることも大事ですが、スリープモードでの消費電力が小さいこともトータルでの消費電力を考えた際の大きなポイントとなります。アンビエントIoTに対応するデバイスを開発する際には、このような条件を満たすBLE SoCを選択することが肝要です。
もちろん、小型で高容量なバッテリー、効率的な環境発電技術も重要です。
電池駆動のBLEデバイスでは、使い捨ての一次電池を使用したものもありますが、よりエコな環境のために充電して何度も使える二次電池、とりわけリチウムイオン電池を採用したものが増えています。このリチウムイオン電池を使ったデバイスに対して、後どの程度の時間使用可能なのか、とか、何度も充放電をしてきたけど新品の状態からどれ程劣化したのか、などの情報を見られることも大切な機能です。
コストをかけない方法ですと、単に電池の電圧を見て残容量を得たりしますが、これでは正確な情報を得ることができません。実際に電池に流れる電流を測って残容量を求める方法は、正確な情報を得られそうですが電池が化学変化により電流を流していることから、その補正のためのデータを作成する手間と時間を必要とします。
リチウムイオン電池専用の残量計ICとして、電池の化学変化によって変動する電池内の抵抗成分を考慮することによって、手間と時間を不要にして、尚且つ、正確な残容量と電池の劣化情報を得られるものもあります。
まとめ
Bluetooth SIGで定義された新たなクラスであるアンビエントIoTを見ながら、アンビエントIoTに対応するデバイスを開発するためにBLEにおける省電力化のポイントを紹介して来ましたが、まとめると以下の3点になると思います。
- 低消費電力な通信仕様であるBLEに対応したSoCでも消費電力の違いがある
- BLEデバイスの寿命期間の98%はスリープ状態なのでアクティブ時(送受信時)の電力が少ないことと共に、スリープ時の電力が少ないことがデバイスのトータル消費電力低減の鍵
- リチウムイオン電池を使ったポータブルデバイスでは、正確な電池残量と共に、電池の劣化状態を知ることが安全に動作時間を最大にするために重要
オンセミでは上記のポイントを押さえたBLE SoC、電池残量ICをご用意しておりますので、ご興味のある皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
- オンセミのウェブサイト
https://www.onsemi.jp/ - BLE
https://www.onsemi.jp/products/wireless-connectivity/bluetooth-low-energy#products=fnN0YXR1c352YWx1ZX4yfiF+TGFzdCBTaGlwbWVudHN+IX5PYnNvbGV0ZX4= - 電池残量計
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