【サルでもわかるBLE入門】(5) BLEの周波数
こんにちは。ムセンコネクト三浦です。
今回も「サルでもわかるBLE入門」と銘打ってお話していこうと思います。BLE初心者の方でも理解をしてもらえるように、できるだけわかりやすく解説していきます。
第5回はBLEの『周波数』のお話です。
わかりやすく解説する為に、BLE初心者にはあまり必要ない例外的な内容は省略して説明するようにしています。
また、あえてアバウトに書いている部分もありますのでご承知おきください。
(厳密な技術的内容を知りたいような方は別の解説書を参考にしてください。)
BLEが使う周波数帯
BLEは2.4GHz帯という周波数帯を利用しています。(少し言い換えて2400MHz帯とも言います。)
2.4GHz帯の周波数範囲は一般的に自由に利用できる周波数帯域になっています。
このような周波数帯域をISMバンドと呼びます。
ISMバンドは”Industry Science and Medical”の略で、産業・科学・医療の分野での有効活用・発展の為に、国際的な取り決めで確保されている周波数帯です。
2.4GHz帯を利用している主な製品や無線通信規格は以下のものがあります。
- 電子レンジ
- コードレスホン
- 無線LAN
- Bluetooth
- RF-ID
- 特定小電力無線
BLEでは2.4GHz帯の周波数を2MHzの幅で分割して40個のチャンネル(チャネルとも呼ばれている)として利用します。
※1つのチャンネルが利用する周波数の幅を『帯域幅(周波数帯域幅)』や『チャンネル間隔』と言ったりします。
BLEは「帯域幅:2MHz」です。ちなみに、Bluetooth Classicは「帯域幅:1MHz」です。
上の図で、青い部分 0ch~36chはGATT通信の時に利用する周波数チャンネルです。データチャンネルと呼ばれています。
オレンジ色の部分 37ch、38ch、39chの3つのチャンネルはアドバタイズの時に利用する周波数チャンネルです。アドバタイズチャンネルと呼ばれています。
電波の衝突回避
ISMバンドの話に少し戻ります。
ISMバンドでは『電波を自由に使える』というのはとても良い利点ですが、逆を言うと沢山の製品がその周波数帯域を利用しているということになります。様々な電波が飛び交っていて「混雑している」周波数帯域とも言えます。
電波は目に見えませんが、同じ周波数の電波がぶつかると双方にダメージがあります。ダメージの具合によっては、電波で伝えたかったデータが壊れてしまって正しく相手に届かなくなる場合があります。通信方式によっては再送を繰り返すことにつながり通信スピードが遅くなってしまったり、通信距離が短くなってしまったりしてしまいます。
BLEでは同じ周波数の電波の衝突をできるだけ避ける為の工夫がされています。
アドバタイズの衝突回避
アドバタイズには37ch(2402MHz)、38ch(2426MHz)、39ch(2480MHz)の3チャンネルを利用します。
この3つの周波数は、Wi-Fiでよく利用される周波数を避けて、できるだけ干渉する影響を受けないように配置されています。
実は、1回のアドバタイズ発信(1発のビーコン信号)と思っていたものは、37ch、38ch、39chの3つのチャンネルそれぞれで、周波数を変更し同じデータが発信されています。
このような仕組み・パターンのおかげで、3つのチャンネルのいずれかが混雑していて電波が届きづらいような環境だったとしても、別の空いているチャンネルでデータを届けることできるので、通信全体に大きな影響が出ないようになっています。
GATT通信の衝突回避
BLE接続後のGATT通信においても、周波数ホッピングという出来る限り電波の衝突の影響を少なくする通信方法を採用しています。
周波数ホッピングとは、周波数を高速に切替えながら通信をすることで、瞬間的に他の通信と電波がぶつかっても、連続して電波がぶつからないようにする通信方法です。
周波数ホッピングをイメージ図にしてみました。
例えば、コードレスホンがある周波数を専有して電波を出し続けてしまっているとします。
ホッピングをしない通信方式の場合は、その周波数で通信しようとしても、コードレスホンの電波とずっとぶつかり続けてうまく通信ができません。
BLEの場合は周波数ホッピングをするので、一時的にコードレスホンの電波とぶつかってしまっても、次のタイミングでは別の周波数で通信することができるので、ぶつかって相手に届かなかった通信内容を、別の周波数で再送することができます。
周波数ホッピングを利用すると通信が大きく阻害される事態を避けることができます。
今回は周波数についてお話しました。
次回もBLEの技術要素について深堀りしてお話したいと思います。