【サルでもわかるBLE入門】(7) BLEの消費電流
こんにちは。ムセンコネクト三浦です。
今回も「サルでもわかるBLE入門」と銘打ってお話していこうと思います。BLE初心者の方でも理解をしてもらえるように、できるだけわかりやすく解説していきます。
第7回はBLEの『消費電流』についてのお話しです。
わかりやすく解説する為に、BLE初心者にはあまり必要ない例外的な内容は省略して説明するようにしています。
また、あえてアバウトに書いている部分もありますのでご承知おきください。
(厳密な技術的内容を知りたいような方は別の解説書を参考にしてください。)
BLEは低消費電力な無線通信
BLE(Bluetooth Low Energy)通信の最大の特徴は、その名の通り『低消費電力』な通信規格ということです。
『省電力』とか『消費電流が低い』ともいいます。
電池で動作する製品は、消費電流が少なければ少ないほど電池寿命が長くなります。
同じ電池寿命を実現するにしても、消費電流が少なければ電池のサイズを小さくできますし、電池のサイズが小さくなれば、例えばビーコンのように機器自体のサイズも小さくすることができます。
機器全体の消費電流が少なくなれば、太陽電池などで動作させることもできるかもしれません。
消費電流の一般的な考え方
機器の消費電流を考えるときには、動作状態毎の消費電流を考える必要があります。
まずは「待機電流」と「動作電流」の2つを意識してみましょう。
「待機電流」とは、機器がアクティブな動作をしていない時の消費電流です。
テレビで言えば、電源コンセントはささっているけど、画面が点いていない状態です。
内部ではリモコンの受信処理だけが動作していて、リモコンから電源ON信号が来るのを待っています。テレビとしてのアクティブな動作はしてませんので、消費電流が非常に少ない状態です。
「動作電流」とは、機器がアクティブな動作をしている時の消費電流です。
テレビの例で言えば、画面が点いていて音も流れている状態です。内部では地上波デジタルの電波を受信する処理や、映像データをエンコードする処理、映像データを液晶ディスプレイに表示する処理など多くの処理が動いていますので、消費電流が大きくなります。
「待機電流」と「動作電流」がわかったら、次に「平均電流」を求めます。
「平均電流」を求める為には、その機器がどのくらい使われるかを想定する必要があります。
例えば、1日のうち3時間だけアクティブ動作をすると想定すると、
(動作電流になっている時間が3時間、待機電流になっている時間が21時間)
平均電流 = (動作電流 × 3 + 待機電流 × 21)/ 24
となります。
1日何時間アクティブ動作をすると想定するかで、平均電流は大きく変わってきます。機器のユースケースを確認して、「待機」と「動作」の割合を想定しましょう。
電池寿命の計算方法
電池に蓄えられている電力量と平均消費電流から大体の電池寿命を計算できます。
電池に蓄えられている電力量のことを『公称容量』と言います。使用状況によっては当てにならないアバウトな指標なので、最近では電池メーカーも積極的にスペックに載せていないことが多いようです。
例えば、単4電池だと公称容量は800mAhと言われています。
単位のmAhはミリアンペア・アワーと読みます。
これは、例えば1mAの電流を消費し続けたときに、800時間電池が持つという容量ということになります。
単純に計算値を置き換えると、
100mAの電流を消費し続ければ電池寿命は8時間になりますし、
0.1mAの電流を消費し続ければ電池寿命は8000時間になります。
実際には、消費電流が大きい場合は利用できる電力量はスペックより少なくなる傾向があるので、100mAの電流を消費し続けた場合の電池寿命はもっと短くなります。
電池寿命を求めるには「公称容量」を「平均電流」で割り算をします。
BLEデバイスの消費電流を算出してみる
もう少し具体的にイメージをするために、BLEモジュール『LINBLE-Z1』の消費電流のデータを利用してBLEデバイスの消費電流を算出してみましょう。
架空のBLE温度計を例に比較します。
このBLE温度計は単4電池直列2本 3Vで動作します。
BLE温度計に対して、パソコンが1時間に1回BLE接続をしにいき、温度データを取得します。
接続して温度データを取得するのには1分かかるとします。
①待機電流
BLEでアドバタイズをしながらパソコンからの接続を待っている状態です。
状態 | 消費電流 | |
---|---|---|
温度センサ | スリープ状態 | 5 μA |
マイコン | スリープ状態 | 5 μA |
BLEモジュール | アドバタイズ状態 | 146 μA |
合計 | – | 156 μA |
※温度センサとマイコンの消費電流は架空のもの。BLEモジュールはLINBLE-Z1の消費電流データから利用(通常モード、アドバタイズ状態、DSI High)
②動作電流
パソコンとBLE接続し、温度センサからデータをサンプリングして、パソコンに送っている状態です。
状態 | 消費電流 | |
---|---|---|
温度センサ | 測定状態 | 100 μA |
マイコン | 動作状態 | 1,500 μA |
BLEモジュール | オンライン状態 | 977 μA |
合計 | – | 2,577 μA |
※温度センサとマイコンの消費電流は架空のもの。BLEモジュールはLINBLE-Z1の消費電流データから利用(通常モード、オンライン状態(ペリフェラル)、連続してデータ送信)
③平均電流
1時間(60分)のうち1分間だけ動作状態になるような使い方なので、平均電流は下記のようになります。
割合 | 消費電流 | |
---|---|---|
待機電流 | 59分/60分 | 156 μA |
動作電流 | 1分/60分 | 2,577 μA |
平均電流 | – | 196 μA |
④電池寿命
単4電池の公称容量は800mAhですので平均電流で割ると4081時間動作できることになります。つまり、約170日の電池寿命になります。
800,000uAh ÷ 196uA = 4,081時間 ≒ 170日
今回は架空のBLE温度計を例にしましたが、機器の仕様や構成によって、もっと低消費電力にすることができますし、ユースケースの想定によっても結果は全然変わってきます。
今回は消費電流についてお話しました。次回もBLEの技術要素について深堀りしてお話したいと思います。