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Bluetooth化により測定時のヒューマンエラーを防げる製品に発展、ヤマヨ測定機株式会社様のBluetoothモジュール導入事例

こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。

今回はLINBLE-Z1をご採用いただいたヤマヨ測定機株式会社様の導入事例インタビューをお届けしたいと思います。

実際にBluetoothモジュールを搭載した「デジタル式メジャーテープ」の製品化をご担当されたヤマヨ測定機株式会社 開発部長の渡部 洋靖氏に、Bluetooth導入までの経緯や開発での要点を伺いました。

ヤマヨ測定機株式会社とは?

ヤマヨ測定機株式会社は、明治39年(1906年)創業、今年で115周年を迎える巻尺専業メーカー。主に10-100mの長い巻尺を製造・販売し、国土開発の土木測量用巻尺類や生産用測定スケール類を始めとする専門分野向けの巻尺づくりを得意としています。1964年の東京オリンピックでは数種の巻尺が使用され、1966年には当時では画期的だった金属(スチール)製巻尺の周りにナイロンをコーティングすることで金属製巻尺の品質劣化を解決した「スチロン」を発表。JISの認定工場にも指定されており、製品の正確さや高品質に加え、経営方針として掲げる「ヤマヨの独自性」という言葉を体現するような製品を世の中に提供しています。

目次

Bluetooth化のキッカケは「腹囲測定」のニーズに着目

渡部 洋靖 氏
ヤマヨ測定機株式会社 部長

-- 今回Bluetooth化を実現した貴社製品について教えてください。

一番最初は10年以上前まで遡ります。当時、自社製品のBluetooth化を開始したキッカケは、2008年4月から開始された「特定健康診査・特定保健指導」でした。生活習慣病予防のための新しい健診・保健指導では、メタボリックシンドロームに着目することが決定していたため、腹囲測定の計測結果をデジタル信号に変え、無線通信で取得できる製品を目指しました。

既存の健診機器はシリアル通信を用いていたため、それに合わせてBluetooth v2.0(SPP)を搭載することにしました。弊社は巻尺専業メーカーですので、社外設計者の協力を得ながら開発を進め、2009年5月に繊維製巻尺でデジタル測定ができる「デジタル式メジャーテープ」の販売を開始しました。

その後の2013年頃には、インターネットを利用したECビジネスの発展に伴い、「カンタンに採寸作業を行いたい」というアパレル業界関係者からの引き合いも増え、スピーディな採寸作業を実現できる次期製品開発へとつなげることができました。

スマホ・タブレット対応のニーズに応えるためLINBLE-Z1を採用

LINBLE-Z1をご検討頂いたキッカケとは?

-- ムセンコネクトのLINBLE-Z1をご検討いただいた経緯を教えてください。

デジタル式メジャーテープの完成後、実際に販売を進めていく中でデジタル式メジャーテープ自体の修理や不具合原因調査などが課題になりました。私たちは巻尺自体のプロではあるものの、Bluetoothに関しては素人であり、「何が原因か分からない」といったことが問題になりました。いろいろと検討を重ねた結果、コネクタ式Bluetoothモジュールであれば、不具合製品に対してモジュールを入れ替えてテストすることができるので、「Bluetoothモジュールが悪いのかどうか?」という原因の切り分けがしやすいことが分かりました。

そこで2018年2月に、それまで採用していたBluetoothモジュールからコネクタ接続式のBluetoothモジュール「ZEAL-C02」へ切り替えることなりました。

さらに、その後様々な業種のお客様が業務用端末をPCからスマホ・タブレットへ切り替え始めていたため、BLE通信にも即座に対応するべく、同じくコネクタ接続式でZEAL-C02と互換性もあるBluetooth v5.0 BLEモジュール「LINBLE-Z1」を採用することに決めました。こうして2021年3月、デジタル式メジャーテープシリーズにBLE対応モデルが追加されました。

左が初期のデジタル式メジャーテープ、右がLINBLE-Z1搭載機器(製品名:ミリオンデジタル・ストレートN5/品番:DTM-20SN5)

LINBLE-Z1を搭載した『デジタル式メジャーテープ』とは?

デジタル式メジャーテープ(画面右)とアプリのデモ画面(画面左)

巻尺の精度や信頼性、メジャーテープの使い勝手はそのままに、採寸した情報をスピーディにiOS、Android、Windowsへ送ることができます。Bluetoothでのデータ送信を組み合わせることで「読み取りミス、記録ミス、入力ミス」を無くせるのが大きな特長です。

  • 製品名:ミリオンデジタル・ストレートN5
  • 品番:DTM-20SN5
  • 製品特長
    • 目盛、液晶パネルのどちらでも測定結果が確認でき、2mの長さまで安心して測れる
    • 信頼のJIS1級繊維製巻尺
    • Bluetooth 5.0搭載、iOS/Android/Windows対応
    • 小型軽量の手のひらサイズ
    • 測定時の持ちやすさにもこだわっているので服や荷物の採寸に最適

前機種から大きく改造せずにスマホ・タブレット対応が出来たのがポイント

デジタル式メジャーテープ内部に組み込まれたLINBLE-Z1

前機種に搭載していたBluetoothモジュール「ZEAL-C02」と今回採用したLINBLE-Z1がピンコンパチブルの構造だったため、全体的な基板設計の見直しはせずにモジュール部分の設計変更と、ファームウェアの修正だけで済みました。

通常、Bluetoothモジュールが新しいモデルになると、小型化などによって基板形状が変わってしまい既存基板で適合できないという場面が多いものの、LINBLE-Z1は長期供給を前提としているため取付位置やコネクタ位置、ピン配列等もピンコンパチブルで設計されています。結果、切替への障害はほとんどなくスピーディに開発を完了することができたので、大幅な経費をかけずに、アパレルやフィットネス業界などの新しいお客様をターゲットにした製品を開発することができました。

巻尺屋としてのこだわりと未来への活動

-- 最後に貴社の事業、製品について今後の展望を教えてください。

デジタル式メジャーテープは当初の医療向けやアパレル向けだけではなく、例えば物流など、もっと広く多くの方々に手軽に使っていただけるようにしていきたいと考えています。そこで「もっとコンパクトに、もっとお手軽なメジャーテープ」を提供するために、早く世の中にこの製品を知ってもらい、お客様からいただいたフィードバックを新しい製品開発に活かしていきたいと思っています。

今回のデジタル式メジャーテープという製品は「巻尺屋がこれまで手掛けてこなかった領域」に対して、「巻尺屋らしいデジタル式の巻尺を作ろう」というこだわりの下で取り組んだ未来に向けた活動だと認識しております。巻尺自体は旧態依然のものであり、変わりようのないものです。ですが、その中でもヤマヨ測定機が大事にしている「ヤマヨの独自性」の精神を体現するような製品を今後も生み出し続けていきたいです。

Bluetooth化のポイント

  • 既存機器の通信規格(シリアル通信)に合わせ、適した無線規格であるBluetooth(SPP)を採用。
  • 測定結果をデジタル化し、且つBluetoothで自動転送することで読み取りミス、入力ミスなどのヒューマンエラーを防ぐことが可能。
  • Bluetoothモジュールを使うことで、時代のニーズ、お客様のニーズに素早く対応することを実現。

インタビューを終えて

渡部氏にお話を伺ったキッカケはBluetoothモジュールの活用事例というテーマではありましたが、非常に真摯に「巻尺」という製品に向き合ってきた渡部氏のプロの姿勢がひしひしと伝わってくるようなインタビューであり、私自身非常に胸が熱くなるものがありました。

「Bluetooth」による無線化はあくまでも製品作りの一部分に過ぎませんが、自社の精神を体現するような独自性のある製品づくりの一助としてヤマヨ測定機様に弊社のBluetoothモジュールをご採用していただいたことにこの場をお借りして感謝申し上げます。

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