Bluetooth東京セミナー2020 Day1 速報まとめ。Bluetooth市場動向、LE Audio、Long Range、新たな測距技術など盛りだくさん
2020年10月28日に開催された「Bluetooth東京セミナー2020 」イベント1日目の速報をお届けします。Bluetoothに関する最新の情報や各社の取り組みから皆さまの無線化開発のヒントになれば幸いです。
Bluetooth®の採用について:世界のトレンドと市場動向
初日のスタートはBluetooth SIG アジア太平洋地域シニア・リージョナル・マーケティング・マネージャーLORI LEE氏からの講演。オーディオストリーミング、データ転送、位置情報サービス、デバイスネットワークなど、主要なBluetoothソリューションの各分野における最新のグローバルトレンドと、市場機会、そして新たな発展についてが主な講演テーマ。
Bluetooth市場は順調に伸長しており、特にBluetoothデバイスの年間出荷台数については今年2020年が46億台、2024年には62億台にまで成長する予測があるとのこと。
本セミナーで高い注目度のある「LE Audio」が登場するオーディオストリーミング分野について。2024年には、デバイスの年間出荷台数は15億台を超え、その後も成長を続けるとの予測。
「LE Audio」の次世代技術により今後は、LC3(Low Complexity Communication Codec)という全く新しい音声コーデックの登場や、マルチ・ストリームといったオーディオソース1台で複数台との通信が可能になったり、ブロードキャスト・オーディオといった通信エリア内で無制限の接続が可能になることで一緒に音楽を聴いたり、一緒に動画音声を楽しんだりもできる「新しいオーディオ体験」が可能だろうという展望も。
また、今年忘れてはいけないことは新型コロナウイルスの中でBluetoothが担った役割が大きかったということ。日本では、COCOAという名で新型コロナウイルス接触確認アプリが存在しているが、このベース技術となっているのがBluetoothであり、世の中の社会課題に対しても貢献しているという実績はBluetooth関係者としては喜ばしいこと。
最後、照明業界のリーディングカンパニーが集うDiiAとBluetooth SIGとの提携により、商用スマート照明の標準規格をつくる活動の紹介。Bluetoothはコネクティッドデバイスの、もはやスタンダートの規格になったことを強調し、SIGの講演は終了。
新しいオーディオ伝送「Bluetooth LE Audio」
続いては、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ株式会社(以下、SONY-HES社と略す。)のワイヤレステクニカルマネージャーを務める関 正彦氏が登壇。v5.2で搭載される新しいBluetoothオーディオ規格である「LE Audio」についての解説。
そもそもSONY-HES社ではLE Audioの規格化活動の初期から参画し、早期の仕様策定完了を目指して活動を推進している中心企業。
LE Audioの概要
LE Audioにより、現在よりも低遅延伝送で画と音のずれが少ない体験を実現できることや、ドイツのフラウンホーファー研究機関が中心となり開発された新コーデック「LC3」を採用することで、低いビットレートでも同等品質、かつ、安定な伝送が可能に。また標準的な規格として高精度同期が可能なマルチストリーム対応が可能になり、ブロードキャスト機能を用いれば同じコンテンツを複数の人々で楽しむような、全く新しいユーザー体験を提供できる可能性も。
話はBluetoothオーディオ規格の歴史について。これまでのオーディオ規格はClassic Audioと呼ばれる通信方式だったが、Bluetooth 5.2からIsochronous(アイソクロナス)チャネルという新しい通信方式が誕生、Bluetoothオーディオを再定義するようなLE Audio規格「LE Audio 1.0」が今年登場。
今後のLE Audioの技術展望
SONY-HES社として「新しいユースケース拡大」と「接続安定性の向上」に期待を寄せていくとし、今後はClassic AudioからLE Audioへ順次切り替わっていくことを予想。
スマートフォンによるBluetooth LE活用事例とBluetooth Long Range検証
3番目は、株式会社構造計画研究所でスマホDEリレー推進担当を務める西浦 升人氏が講演。「市販のスマートフォンではBluetooth Long Rangeはいったいどのくらい飛ぶのか?」といったBluetooth LE活用ソリューションとスマホを用いたLong Range検証内容が主な講演テーマ。
スマホdeリレーの紹介
通信インフラがない場所でもスマートフォン同士でのコミュニケーションを可能にする技術。Bluetooth LEによるすれ違い通信でデータを交換。交換したデータを蓄積、独自アルゴリズムで他のスマホへ中継転送を実現するような仕組み。
Long Range検証について
見通しが良い地方郊外での検証結果は、v5.0のLE Coded PHY対応にて画像データ(57KByte)の転送自体は130mの距離で通信が可能。郊外河川敷では最大300m超の通信可能の実績も。さらに、Bluetooth v4に比べ、数倍程度の距離拡大も確認。
但し、やはり都内都市部地上での通信環境では100mを切るような通信距離しかでないことも。都市部ではWi-Fiなどの干渉波やビルなどの建造物が多数あるため、Long Range性能を発揮するための通信性能は実環境に大きく依存。
Location ServiceとSmart Homeの最新技術動向
4番目の講演者はシリコン・ラボのIOTスペシャリストである水谷 章成氏。内容としては、Location ServiceとSmart Homeにおいて、Bluetoothがどのように使われ使えるのかにも焦点を置いた最新動向が主なテーマ。一番興味を引いたのは最後に講演した「Project CHIP」について。
スマートホーム分野における接続標準化プロジェクト「Project CHIP」
スマートホームの中で規定をつくるプロジェクトグループであり、その中にはAmazon、Apple、Google、IKEA、そしてZigbeeアライアンスなども参加した包括的なプロジェクト。シリコン・ラボも参画しており、パートナー同士で統一規格をつくる動き有り。
Bluetoothの車載市場活用ならびに測距技術について
Day1の最後はアルプスアルパイン株式会社の高井 大輔氏が講演し、Bluetoothの車載市場活用ならびに測距技術の紹介が主な講演テーマ。特に、新しい測距技術としてToA(Time of Arrival)を活用した事例は今後期待の技術。
ToAを用いて1対1での距離測定
ToAとAoAを組み合わせることで、1:1でのリアルタイムでの位置測定を可能にしたシステムを開発。講演では市販の自走ロボットを使って、位置の軌跡を捉えた映像を公開。
高精度位置測位システムの評価キットを提供開始
本講演の前日、10月27日に発表されたプレスリリースの紹介でDay1の最後の講演の幕を閉じる。
先述のToA/AoAの技術を使った高精度位置測位システムを利用した評価キットを開発、来月11月から提供を開始するとのこと。また、Q&Aセッションでは「技術的には標準Bluetooth RFでも実現可能なため、現在は独自技術だが将来的にSIGの標準化に組み込まれる期待も」との前向きなコメントも。
Day1を終えて
1日目が終了した感想として、昨年のセミナーで大きく取り上げられた「Direction Finding」と、今年登場したv5.2搭載の「LE Audio」を中心とした話題が多く、技術の進歩を感じました。それもあり、新しい技術進展と活発な市場動向を両立しているBluetoothの力強さを感じたセミナーとなりました。続く、Day2も見逃せません。