【紹介動画も公開中】ムセンコネクト著書『Bluetooth無線化講座―プロが教える基礎・開発ノウハウ・よくあるトラブルと対策―』絶賛発売中

【無線試験でなぜ必要?】Direct Test Mode(DTM)とは?

こんにちは。ムセンコネクト三浦です。

今日は、Direct Test Mode(ダイレクト・テスト・モード)についてご紹介します。

目次

Direct Test Modeって何?

Direct Test ModeはBluetoothの規格書で規定されている電波試験を行うためのテストモードです。よくDTMと略されます。

Bluetoothは「Bluetooth Classic」と「Bluetooth Low Energy」の2つに大きく分類されますが、Direct Test Modeはそのうちの「Bluetooth Low Energy」に適応されます。
※「Bluetooth Classic」の場合は別の仕組みがありますが、この記事の中では深堀りしません。

Direct Test Modeは物理層周辺の低レイヤーの試験を行うためのものです。

BLEデバイスがちゃんとBluetoothの規格に沿った電波を発信出来るか、専用の試験装置を使ってテストを行うときに利用します。

また、Bluetoothの規格の電波試験だけではなく、各国の電波法に沿って電波試験をする際にもDirect Test Modeが利用されます。

なぜDirect Test Modeが必要なの?

Bluetoothは相互接続性を大事にしている通信規格です。A社が作ったデバイスAと、B社が作ったデバイスBが、できるだけトラブルなく通信出来るように色々な決まりや仕組みを作っています。

Bluetoothの協会団体であるBluetooth SIGは上位層で規定されているプロファイルをテストする仕組みを用意していますが、下位層をテストする仕組みとしてDirect Test Modeの仕組みもちゃんと用意しているのです。

Direct Test Modeの必要性

例えばここに、あるBLEデバイスがあるとします。

「このBLEデバイスが問題なく通信できるような電波を出しているか確認してほしい」と認証機関にお願いしても、「このままではテストできません」と断られてしまうでしょう。

BLEデバイスは周波数ホッピングをしているので、電波を発信する周波数がすぐに切り替わってしまいます。BLEデバイスの現物だけあっても、1つの周波数を連続して試験することができませんし、定量的なテストを行うことができません。

そこで登場するのがDirect Test Modeです。

BLEデバイスにはDirect Test Mode用のファームウェアを書き込んでおきます。
この時、試験対象のBLEデバイスをDUT(Device Under Test)と呼びます。

Direct Test Modeのコマンド送信に対応した上位のテスト装置からDUTに対して、どのような試験電波を発信するか指示します。
どのPHYで発信するか(LE 1M、LE 2M、LE Coded S=8、LE Coded S=2)、電波の送信電力、発信する周波数チャンネル、パケットのサイズ、パケットタイプ などを指示します。

Direct Test Modeを利用することで、狙った試験電波を発信することができるようになり、発信された試験電波をスペアナ(スペクトラムアナライザー)などの試験装置で観察することで、規格に沿った電波かどうか確認することができます。

上記は一例で、試験内容や試験方法は様々です。

【重要】Direct Test Modeを意識してBLEデバイスを開発しましょう

BLEデバイスを開発していく中で、『いずれDirect Test Modeを使って試験をすることがあるかもしれない』と意識しておくと良いでしょう。

Direct Test Modeを利用するには、UART等で指示コマンドを送る必要があるので基板の設計にも関係してきます。
開発の終盤になってから考えるようだと、基板変更による余計な出費や開発スケジュールにも影響してしまうかもしれません。

特に、

・日本の電波認証済みのBLEモジュールを利用していない場合
・海外の電波認証を取得する必要がある場合
・電波法やBluetooth規格の詳細な試験を行う必要がある場合

には、Direct Test Modeに対応できるようにあらかじめ設計しておくことをお勧めします。

よろしければシェアをお願いします
目次