【Bluetooth】ブランクモジュールって何?ブランクモジュールのメリットと見落としがちなデメリットとは?
こんにちは、ムセンコネクトCMO、兼 無線化.comカスタマーサポート担当の清水です。
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今日はBluetoothモジュールの種類と、選ぶ際の注意点についてお話したいと思います。
Bluetoothモジュールには種類がある。選択肢があるということは選択ミスも起こり得る
組込み用Bluetoothモジュールには種類があります。
今から遡ること15年ほど前、無線化.comがZEALシリーズの初代をリリースした当時はまだまだBluetoothを扱うメーカー自体が少なく、さらに大口案件でなければ販売すらしてもらえないような時代でしたので、エンジニアが入手できるBluetoothモジュールは非常に限られていました。それが今現在では技術進歩やメーカーを取り巻く環境が変化したことによって、メーカーの数も、Bluetoothモジュールのラインナップも増え、良くも悪くもエンジニアの選択肢は増えました。
良くも悪くもというのは、選択肢が増えたことはエンジニアにとって喜ばしいことですが、一方でラインナップに「上級者向けのモジュール」が入ってきてしまったことによって、エンジニアがモジュールを使いこなせず、結果として選択ミスになってしまうケースが出てきました。
実際、モジュールの特徴をよく理解せずに選択してしまい、トラブルが解決できないということで無線化.comにご相談いただくエンジニアが少なからずいらっしゃいます。(ZEALシリーズ以外のモジュールを選択したものの、うまくいかずに無線化.comに相談がきたパターン)
今回はBluetoothモジュールの種類の一つであるブランクモジュールを取り上げます。ブランクモジュールはメリットばかりと思われがちなため選択するエンジニアが増えていますが、見落としがちなデメリットを把握せずに選択してしまったため、後々トラブルになってしまうケースも少なくありません。ブランクモジュールのメリットとデメリットをしっかり理解し、失敗しないモジュール選定の参考にしてください。
ブランクモジュールとは?コンプリートモジュールとの違いは?
Bluetooth無線というのは、『Bluetooth ICやアンテナなどのハードウェア部分』と『プロトコルスタックやファームウェアなどのソフトウェア部分』、この2つが1つになってはじめてBluetooth機能を実現します。
無線化.comのZEALシリーズはハードとソフトの両方を搭載し、マイコンとUART接続するだけですぐにBluetooth通信を実現することができました。Bluetoothに必要な要素を全て満たしているという意味で、無線化.comではこれを「コンプリートBluetoothモジュール」と名付けました。
一般的にBluetoothモジュールと聞くと、このコンプリートBluetoothモジュールを想像されるエンジニアが多いのではないかと思いますが、中にはソフトウェアが載っていない、つまりハードウェアのみのBluetoothモジュールも存在します。これを世間ではブランクモジュールと呼びます。
ブランクモジュールはソフトウェア部の自作が必要
ブランクモジュールはソフトウェアが載っていませんので、購入したそのままの状態では動きません。プロトコルスタックやファームウェアを自作し(開発)、自らの手でモジュールにソフトウェアを書き込むことによって、はじめてBluetooth通信を行えるようになります。裏を返せば、システムの要件に合わせてソフトウェアを自由にカスタマイズすることができ、オリジナルのBluetoothモジュールを作りこめるのが最大の特長です。
ブランクモジュールのメリット
まずブランクモジュールのメリットをご紹介します。
外部マイコン要らず
コンプリートBluetoothモジュールの場合、上位アプリケーションが搭載されている外部マイコンからBluetoothモジュールをコントロールすることになりますが、ブランクモジュールには上位アプリケーション自体を載せることができますので、外部マイコンが不要になります。マイコンが要らなくなれば、マイコンが無くなったスペース分、デバイスサイズを小さくすることができます。さらにマイコン単価分のコスト減も望めます。
自社の要件、仕様に合わせて自由にファームウェア、アプリケーションを開発できる
Bluetooth規格、認証上の制約はありますが、Bluetooth無線に関する挙動をある程度要件に合わせてカスタマイズすることも可能です。
見かけ上のモジュール単価が安い
Bluetoothモジュールメーカーにとって、ソフトウェア部のコストを削減できるため(開発コスト、検査コスト、サポートコストなど)、コンプリートモジュールに比べると「見かけ上のモジュール単価」は安くなる傾向にあります。
ただし、本来モジュールメーカーが負担する各種コストを自社で負担することになりますので、トータルコストとしてどちらがお得かどうかはケースバイケースです。
ブランクモジュールのデメリットと失敗例
次にブランクモジュールのデメリットと、デメリットを把握せずにブランクモジュールを選択してしまったエンジニアの失敗例をご紹介します。
自社でファームウェア開発が必要になる。開発コストやメンテナンスコストが増える
ソフトウェア部分の開発コストがかかります。また、ソフトウェア部分で見つかった不具合に関しては自社で責任を負うことになりますし、管理、メンテナンスのコストもかかってきます。
ファームウェア書込作業は誰がやるの?出荷時検査は?
ブランクモジュールにはファームウェアが載っていないため、モジュール1個1個に対してファームウェアの書込作業が必要になります。量産時の製造工程が一つ増えるということです。そうなると当然、動作確認の検査も必要になります。これが結構見逃しがちなコストです。
結果、書込作業、検査コストを加味すると、手間や責任は増えるのに、期待したほどトータルコストは安くならなかったというケースが出てきます。
コストダウンを目的としてブランクモジュールを選んだ場合、かなり数量が出る案件じゃなければコストメリットが活きず、むしろ割高になる恐れさえあります。ご注意ください。
ソフトウェア部分に対して、自社でBluetooth認証の無線試験が必要になる場合も
これも良くあるトラブルです。
ブランクモジュールの中にはアプリケーション層だけではなく、さらに下層のBluetoothスタック部分にまで手を加えられるものがありますが、その場合Bluetooth認証はEPL登録だけでは済まず、無線試験まで必要になってしまうケースがあります。
無線化.comではEPL登録の代行業務に携わってきましたが、そういったことを知らずにブランクモジュールを選んでしまい、EPL登録の段になって初めて無線試験が必要なモジュールだったと知り、困惑されるエンジニアがいらっしゃいました。また、無線試験は必要なくとも、複数のQDIDを組み合わせなければEPL登録できないモジュールもあります。
ブランクモジュールを採用する前には、必ずBluetooth認証、EPL登録をどのように行えば良いのか、メーカーや代理店に確認しておきましょう。
ブランクモジュールは中級者、上級者向けのBluetoothモジュール
このように、誰でもカンタンに無線化できるコンプリートBluetoothモジュールとは異なり、ブランクモジュールは中級者、上級者向けのBluetoothモジュールと言えます。
家具に例えるなら、コンプリートモジュールは店頭に並んでいる「組み上がっている家具」です。お店で購入し、自宅に届けばすぐに使い始めることができます。
一方、ブランクモジュールはホームセンターで材料を調達し、自ら組み上げる「DIY」のようなものです。好きなデザイン、痒い所に手が届くようなカスタマイズが可能な上、コストも安上がりです。ただし、それを実現するためにはDIYの知識やスキルが不可欠ですし、時間や手間がかかるため、材料費以外の「見えないコスト」がかかってきます。
Bluetoothモジュールをお選びの際は、コンプリートモジュール、ブランクモジュールそれぞれのメリット・デメリットをよく理解し、要件に合わせて使い分けるのが肝要です。
LINBLEのファームウェアカスタマイズを承ります
LINBLE-Z1はコンプリートBluetoothモジュールです。
太陽誘電製のブランクモジュールにムセンコネクトオリジナルのファームウェアを載せ、さらにZEALシリーズとピンコンパチにして互換性を持たせたものがLINBLE-Z1です。
ムセンコネクトはブランクモジュールをご用意しておりませんが、LINBLE-Z1のファームウェアをカスタマイズしたり、ブランクモジュール用のオリジナルファームウェア開発を承ることも可能です。Bluetoothモジュールをお探しの際はムセンコネクトまでお気軽にご相談ください。