【エンジニア向け】企画がブレない、新商品の作り方(2)課題解決策を導くフレームワーク『バリュープロポジションキャンバス』
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。
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前回はデザイン思考の必要性とそのプロセス概要、プロセス概要の中でも最初のSTEPである『STEP1:共感』についてはユーザーヒアリングが重要だとお伝えしました。
【再掲】デザイン思考のためのプロセス概要
「よし、では早速ユーザーにヒアリングしにいこう!」
と思ったエンジニアの方がいたら要注意です。
プロセス概要のSTEPとは『プロセスそれぞれの道程』であり、次のSTEPと関連していることを常に意識したSTEPの実行でなければなりません。つまり今回だと、STEP2を前提としたSTEP1の取り組みが必要です。
ではユーザーヒアリングを行い、『STEP2:課題発見』をより効果的に実施するにはどうしたらよいのでしょうか?
そこで本日は、STEP1を行う上で是非皆さまに理解しておいていただきたいSTEP2で活用するフレームワークについて先取りして学んでいきたいと思います。
課題解決策を導くフレームワーク『バリュープロポジションキャンバス』
どんな新商品でも、ターゲットとなるお客様のニーズ(お客様の共感部分)を把握して、解決すべき本質的な課題を見つけ出す作業というのは非常に難しいことだと思います。また新商品をつくるにはチーム内で議論を進める必要もあり、
「チーム内(関連部署も含め)では新商品に対する認識さえもずれていて、いつも議論が錯綜。ちっとも前に進まない。。」
「何を考えればよいかはっきりしないため、勝手な解釈で思考を進めてしまう。。」
というお悩みで頭を抱えておられる方々も多いのではないでしょうか?
そこで是非活用していただきたいのが『バリュープロポジションキャンパス(VPC)』です。
VPCとは何か?
VPCを一言で説明すると『新商品を使って頂きたいお客様に対して自社が価値として提供することで、お客様の課題解決につながるようにするためのフレームワーク』です。
VPCの概要
VPCの使い方
使い方はそれぞれの欄を順番ごとに埋めていきます。その順番は
- 価値提案(左上)
- 顧客プロファイル(右上)
- 顧客ニーズ(右下)
- 提供可能な価値(左下)
といった流れになります。
それでは順番ごとに説明していきます。
1⃣価値提案
まず最初にやらなくてはいけないのが『価値提案』の欄を一度埋めることです。
ズバリ一言で『何を価値として提供するのかがすぐに分かること』がポイントです。また『価値提案』は『存在価値』とも言い表すことができ、自社でしかできないことと顧客が求めていていることが交わる結論部分に相当します。
折角なので弊社製品であるBLEモジュール『LINBLE-Z1』で例えてみます。
例)LINBLE-Z1の価値提案
「お客様の製品に組み込むことでカンタンにBLE通信を実現できるBLEモジュールを提供する。」
ことです。
上記のように一言で言い切れることを意識してみてください。
2⃣顧客プロファイル
次に取り組むのは『顧客プロファイル』の設定です。ここも分かりやすくがポイントになります。どんなマーケット(対象市場セグメント)で、どんなお客様で、抱えている課題や充足すると嬉しいニーズが何なのか?を箇条書きでも良いので言い表せることを意識して欄を埋めてみてください。
例)LINBLE-Z1の顧客プロファイル
- 中堅・中小企業の産業機器メーカーエンジニア
- 元々無線化に関するノウハウが少ない
- できるだけトータルの開発費を抑え、自社製品の無線化を実現したい
3⃣顧客ニーズ
このVPCの中でも顧客ニーズはエンジニアの方々が一番苦労する部分かと思います。先述した2⃣顧客プロファイルの詳細を詰める部分であり、ユーザーヒアリングに相当する部分でもあります。ここの部分をもう少しカンタンに欄を埋めることができるように、次回は『顧客調査』とその方法について詳しく学んでいく予定です。
顧客ニーズには以下大きく3つの欄が存在し、それぞれ次の観点から考えて欄を埋めてみます。
- Customer Job(s)
- 顧客がしたい/しなければいけないことは何か?
- Gains
- 達成したいことは何か?
- 楽しい、幸せは何か?
- 恩恵は何か?
- Pains
- 今現在の苦痛や不満は何か?
- 障害は何か?
- リスクは何か?
例)LINBLE-Z1の顧客ニーズ
- Customer Job(s)
- メーカーエンジニアが自社製品にBLEを組込み、BLE通信を実現したい
- Gains
- トラブルなくカンタンにBLEを組み込みたい
- 短時間で無線化を実現できる
- トータルでの開発コストを抑えることができる
- Pains
- BLE、無線全般に詳しくない
- モジュールの調達のし易さ
- モジュールの生産中止対応
4⃣提供可能な価値
最後に、左下の欄である提供可能な価値を埋めれば終了です。『提供可能な価値』とは『自社ならではの提供価値』とも言い表せます。おそらくここはエンジニアの方々が一番得意な欄だと思います。自社側の強みを活かしていかに応えるかの部分であり、普段よく考えている領域だと思います。
提供可能な価値にも以下大きく3つの欄が存在し、それぞれ次の観点から考えて欄を埋めてみます。
- Products & Services
- 提供する製品やサービスは何か?
- Gain Creators
- 顧客の喜びを増やす新しい要素は何か?
- Pain Relievers
- 顧客の悩みを取り除く機能は何か?
例)LINBLE-Z1の提供可能な価値
- Products & Services
- BLEモジュール LINBLE-Z1
- Gain Creators
- 迅速なカスタマーサポート
- 充実した情報(無線化講座、ドキュメント類)
- 豊富な無線化サービス
- Pain Relievers
- UART・オートモードでカンタンに制御
- 長期供給を基本とした直販体制
と、ここまで埋めるとVPCは一旦終わりになります。
再度1⃣価値提案に戻ってみる
一息つきたいところですが、最後に大事な作業が一つだけ残っています。それは
今一度確認して、最初に埋めた1⃣価値提案の部分をブラッシュアップしてみること
です。おそらく多くのアイデアが2⃣~4⃣を真剣に考えたからこそ、1⃣価値提案を見返してみるとその仕上げが必要になっていると気づくと思います。
まとめ
今回は課題解決の答えを導く際に利用したいフレームワークのVPCについて学びました。そのフレームワークの順番とその中身について解説しましたが、1⃣の価値提案をブラッシュアップするために2⃣~4⃣が存在します。その中でも特に難しいのは3⃣顧客ニーズを明らかにして整理することです。この流れとフレームワークの目的を理解しておくことで、最初に行うべきユーザーヒアリングがより効果的になります。
そこで次回は顧客ニーズを明らかにするための『顧客調査』とその方法について学んでいきたいと思います。