【シリコン・ラボ深田社長】Bluetoothモジュール事業の供給性、独自性、新技術を語ってもらいました
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
今回は特別ゲストとしてシリコン・ラボの深田氏を迎え、同社Bluetoothモジュール事業の今と今後についてお話いただきました。
シリコン・ラボの特長や魅力を教えてください
水野)
まずはシリコン・ラボ社の特長や魅力を教えてください。
深田氏)
シリコン・ラボは10年以上前からIoTの到来を予測し、テクノロジーの買収も含め準備を進めてきました。
2012年にZigbeeのメーカだったEmber社、2013年に超低消費電力ArmマイコンメーカのEnergy Micro社を買収し、さらに2015年にはIoTで最も重要なBluetoothのモジュールメーカであるBlueGiga社を買収しております。
現在はこれらの技術を組み合わせた無線SoCのPlatformであるEFR32シリーズを展開しており、Simplicity Studioという統合開発環境を使って、一つの無線SoCプラットフォーム上で複数のプロトコルを搭載した製品開発が可能となっています。
水野)
その中でもシリコン・ラボは特にBluetoothに力を入れているイメージがありますが、そこら辺をもう少し詳しく教えてください。
深田氏)
シリコン・ラボではBluetoothに注力しており、これまで培ってきた無線技術に、超低消費電力マイコン技術と高い信頼性のあるBluetooth Stackを組み合わせ、お客様に最高水準のBluetooth用無線SoCをご提供しておりますが、特に無線性能、低消費電力性能についてはお客様から高評価を頂いております。
チップベンダーでは珍しく、そのSoCを使ったModuleの開発、製造、販売も行っております。これまではICメーカとモジュールメーカの分業が主で、何か不具合や問題が発生した際に、その問題の切り分けが非常に難しく、お客様がたらい回しにされるケースが多々見受けられました。そこをシリコンラボはICからModuleまでワンストップショップでサポートし、お客様にご満足いただいております。当然、コスト面でもモジュールメーカの利益が入っていないため、コスト競争力のあるモジュールがご提供できます。
さらに産業、インフラ向け製品への搭載を考え、無線SoCとModule全ての製品で10年の供給保証をしており、安心してお使いいただける環境を整えております。
また、最新無線SoCにおいては今話題のMatterへの対応も進めているのと同時に、『ARM® Coretex®-M33』以外の別のプロセッサを内蔵し、エッジでのAI/機械学習処理ができる機能をサポートしてきております。
昨今の半導体不足に対するシリコン・ラボの状況や今後の見通しは?
水野)
世の中まだまだ半導体不足が続いています。これについて御社の状況や今後の見通しを教えてください。
深田氏)
ご多分に漏れず弊社もこれまで1年半程度、多大な影響を受けました。
ただ、最近はプロセスノードによって差が出てきました。
実は180nmや90nmの古いプロセスは弊社の協力工場でも投資対象になっていないため、キャパの増強がなされてきませんでした。
さらにこれらのプロセスはアナログ製品の製造も多く、特に車載向け半導体などの主要ICの製造も集中していることから、キャパの取り合いが今後も1年程度は継続するのではと予測します。
方や、40nm以下のプロセスに関しては協力工場もキャパの増強を進めております。
弊社はCEOが直接、協力工場のTopと交渉し、40nmのキャパの倍増を進め、さらに別の協力工場での生産ライン追加を進めた結果、40nmプロセス品に関しては十分な供給キャパの確保に成功しました。
よって、現在弊社で主力の第2世代無線SoC(40nm)、及びそのモジュールについてはこの10月からAllocation(割り当て・配分)が解除となり、通常の発注リードタイムでのお取引が可能となりました。
加えて、お客様の緊急度に応じた特別対応等もご相談に乗っているところです。
水野)
各社まだまだ部品調達に苦しんでいる中、通常の発注リードタイムに戻ったというのは朗報ですね。シリコン・ラボ製品への期待がさらに高まりそうです。
期待している新製品は?
水野)
現在、期待している新製品があれば是非教えてください。
深田氏)
Bluetoothの新機能ではないのですが、今、個人的に最も期待しているのは、弊社最新Bluetooth SoCであるEFR32BG24にエッジAI/機械学習向けの専用プロセッサーを内蔵したことです。
近年、クラウド処理AIではデータ通信量の増加や通信時間による遅延などが問題視されてきており、それを解決する手法としてエッジAI/機械学習が注目され始めています。
通常、他社のBluetooth ICではCortex-M4などのMCUでプロセッシングするのですが、弊社のエッジAI/機械学習専用プロセッサーであるMatrix Vector Processor(MVP)を使えば、1/6の消費電力、且つ1/4の時間でプロセッシングが可能です。
水野)
エッジAI/機械学習の専用プロセッサーが搭載されているというのは面白いですね。具体的に、どのように活用できるのでしょうか?
深田氏)
Googleが開発した機械学習のソフトウェアライブラリであるTensorFlowを用いてあらかじめPC等でモデル学習を行っておけば、EFR32BG24上のMVPではIoTデバイス向けの軽量版であるTensorFlowLite形式として動作させることができます。
例えば、エアコンの正常時と異常時のモーター音をそれぞれ学習させれば実運用時にエッジでのモニタリングが可能となり、予知保全に活用できます。ガラスの割れる音を学習させれば防犯用のアラーム機能を追加できます。
また、当EFR32BG24はBluetooth以外にZigbee、Thread、Matterへも対応しておりますので、各用途に応じてプロトコルを変更し対応することも可能となります。
なお、TensorFlowにてモデル学習を行うことは非常に深い知識を要求されますが、EFR32BG24はEdge ImpulseやSensiMLといった3rd Party製のモデル学習ツールを使うことができるので、これにより開発期間やエンジニアの負担減も期待しています。