Bluetooth接続トラブルの最強解析ツール「プロトコルアナライザ」って何?
皆さん、こんにちは。技術専門商社のコーンズテクノロジー株式会社です。メーカーエンジニアの無線化を支援するため、ムセンコネクトの無線化講座で解説記事を掲載させていただくことになりました。
今回はその第一弾として、Bluetooth接続トラブルの最強解析ツール「プロトコルアナライザ」について解説します。
Bluetooth機器間のやり取りを丸裸に!Bluetoothプロトコルアナライザ
Bluetooth機器を接続しようとした際に、うまく接続できていなかったり、接続できていても思うように動作してくれない…Bluetooth通信は無線上で目に見えないやり取りを行っているので、ユーザーからは問題が見えないことがよくあります。そんな目に見えない接続トラブルを解決するのに便利なツールがBluetoothプロトコルアナライザです。
『Bluetooothプロトコルアナライザ』という単語は聞き馴染みのない言葉かと思いますが、無線上の目に見えない通信のやり取りを可視化し、Bluetoothにおけるあらゆる問題を解析できるツールになります。
つまりBluetoothプロトコルアナライザを使ってBluetooth機器のやり取りを読み解くことで様々な問題を浮き彫りにすることができるのです。
Bluetooth機器はどんなやり取りをしているの?機器同士のやり取りが見られるメリットとは?
では、実際のBluetooth通信を行う際のやり取りについて、見てみましょう。
Bluetooth通信は、セントラル(親機)とペリフェラル(子機)に役割が分かれています。セントラルは会社の上司のように、やり取りをコントロールする役割を担っており、ペリフェラルはコントロールしてもらう部下のような役割を担います。
一般的には接続の設定をするスマートフォンやパソコンがセントラルになり、接続される側であるイヤホンやキーボード、マウスなどがペリフェラルになります。これらセントラルとペリフェラル間で会話をしてBluetooth通信が行われています。
ここで接続までの流れを紹介します。
①セントラルからペリフェラルに向かって『接続したい』と指示を出します。
②ペリフェラルが『接続をしましょう』と返事を返します。
③Bluetoothの接続が成立し、データの受け渡しが始まります。
④通信を終了するときは一方がもう片方に『切断しましょう』と指示を出して、通信を終了します。
Bluetoothが繋がるまでに機器同士ではこのような話し合いが行われています。こういった話し合いがうまくいかなかった場合は接続できなかったり、場合によっては接続できていてもデータの受け渡しに問題が起きてしまうことがあります。
そういった問題はセントラル側、はたまたペリフェラル側のどちらに原因があるのか、ユーザーからは目で見ることができません。そのようなブラックボックスであるBluetooth通信を見えるようにするのが、Bluetoothプロトコルアナライザです。
【Bluetooth接続のトラブル事例】プロトコルアナライザは具体的に何ができる?
スマートフォンとBluetoothイヤホンを接続しようとした際に、うまく接続できなかったり、接続できていてもブツブツと音が途切れてしまうような経験をされたことはありますか?近年ますますBluetoothイヤホンは人気になっており、市場ではとてもお手軽な価格で購入できるようになりました。その半面、Bluetoothの接続問題はより多くの方が経験しているかと思います(私も経験したことがあります汗)。今回は、皆様に身近なBluetoothイヤホンとスマートフォンを接続した際の代表的なトラブル例とともにBluetoothプロトコルアナライザでできることをみていきましょう。
トラブルその1. そもそもつながらない
Bluetooth通信を行う際のやり取りでは、まずスマートフォン側がイヤホンに接続したいと指示を送ります。
その後、イヤホンがその指示に応答することによってBluetooth接続が開始されます。
もし繋がらない場合、よくある原因として以下の2つが考えられます。
①スマートフォンから接続の指示を正しく出せていない
②イヤホンが接続指示を受け取っているが、返信をしていない
ユーザーからはただ接続できていない状態にしか見えませんが、①の場合はスマートフォン側の問題で、②はイヤホン側の問題になります。
Bluetoothプロトコルアナライザではセントラル→ペリフェラル、ペリフェラル→セントラルのように話し合いとその方向を見ることができます。それによって、どちらの機器が問題を起こしているか切り分けることができます。
トラブルその2. 劣悪な電波環境下で通信が途切れてしまう
Bluetooth通信は2.4GHz帯の周波数を使用して無線通信をしています。この2.4 GHz帯は他のBluetooth機器以外にもWi-Fiや電子レンジが自由に使うことができる周波数帯です。ラジオが近い周波数でやり取りを行う際に干渉してしまうように、Bluetoothでも同じような現象が起きます。干渉してしまうと、うまくデータの受け渡しができなくなってしまい、Bluetoothイヤホンの場合では音がブツブツと途切れる「音途切れ」が生じてしまいます。
干渉を防ぐためにBluetooth通信では、電波がお互いにぶつからないようにする「周波数ホッピング」という機能があります。例えば、展示会や駅構内などのWi-Fiや複数のBluetooth機器がやり取りをしている混雑した状況下ではその機能は非常に重要です。なぜなら周波数ホッピングがうまく機能していないとデータの話し合いが途切れてしまい、音途切れが起きてしまうからです。
Bluetoothプロトコルアナライザでは、周辺の電波環境に合わせて他の電波をよける様子を見ることができます。ずばり、お持ちのBluetooth機器の周波数ホッピングがちゃんと機能しているのか一目瞭然で分かります。
トラブルその3. 安定した電波環境下でつながっていても勝手に切れてしまう
「トラブルその2」では、駅構内や展示会などの劣悪な環境下ではBluetooth通信が不安定になることがあるとお伝えしましたが、あまり劣悪な電波環境でない自宅のような場所でもBluetooth通信が切れてしまったという経験はありませんか?そのような安定している環境下でBluetoothが勝手に切れてしまう原因としては、繋がった機器から対応しきれない要求が来てしまい、話し合いを勝手にやめてしまうということが考えられます。また、実際にあったトラブル事例としては、イヤホン(ペリフェラル)が別のスマートフォン(セントラル)に繋がりに行ってしまい、既に繋がっていたスマートフォンと切断してしまうということがありました。このようなやり取りもBluetoothプロトコルアナライザでは、順を追ってみることができるため、どこで話し合いが決裂してしまったのか、あるいは別のイヤホンに邪魔されてしまったのか見ることができます。
Bluetoothプロトコルアナライザではいつどの機器同士が接続、切断したかを見ることができます。切断された時間がわかれば、その辺りに行われたやり取りから原因解析ができます。
ユーザーからはトラブル1〜3の全ては『ただ機器同士がうまく接続できていない』としか見えませんが、Bluetoothプロトコルアナライザを使用すれば、どの機器がどのような原因で問題が起きているのか確認することができます。
まとめ
Bluetooth機器を使用する際、トラブルが起きてしまうとユーザーはストレスを感じてしまいます。Bluetooth機器メーカーはユーザーにそのようなストレスを感じさせないよう、日々Bluetoothプロトコルアナライザを使い、問題を解決しながらBluetooth機器の性能向上を目指しています。BluetoothプロトコルアナライザはBluetooth機器を設計・開発する上ではなくてはならないツールなのです。
今回のブログはBluetoothプロトコルアナライザの簡単な紹介になりましたが、今後もBluetoothのトラブル解析や課題解決に役立つ情報をご紹介する予定です。乞うご期待ください。
製品 / 測定・解析サービスについて
Teledyne LeCroy Frontline社※製 BluetoothプロトコルアナライザはBluetooth接続トラブル解析に役立ちます。
Bluetooth規格の立ち上げ当初からBluetoothプロトコルアナライザを提供するリーディングカンパニーです。昨今は、Bluetooth、Wi-Fi、802.15.4のプロトコルアナライザに限らず、RFテスタ、LE Link Layer認証テスタも提供するほか、豊富な経験を活かした試験受託、試験アドバイザなど幅広いBluetooth試験ソリューションを数多くの企業に提供しています。
また、弊社ではBluetooth測定・解析サービスもご用意しております。