【解説】Bluetooth v5.4がリリース。新機能追加で大幅アップデート
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
先日、Bluetooth SIGから最新バージョンとなるv5.4がリリースされました。そこで、本日はv5.4に関するアップデート概要ならびに期待されているユースケースについて解説します。
v5.4のアップデート概要について
今回のv5.4の中身としては大きく4点のアップデートがありました。
双方向の高効率アドバタイズの仕組み
v5.4からPAwR(Periodic Advertising with Responses)という新しい通信方式が追加になりました。これは、従来からあるPADVB(Periodic Advertising Broadcast)の仕組みを拡張したものです。
従来のAdvertisingは送信するデバイスからの一方通行でしたが、PAwRではAdvertisingを受信する側からも応答パケットを返せるようになり、双方向の通信ができるようになりました。また、Periodic Advertisingを受信する側も、効率よくパケットを受信し、より省電力にデータを受信できるようになりました。
さらにはAdvertisingを送信する側が、通信相手毎に異なるデータを送信することもできるようになりました。
つまり、今後はPAwRによって、コネクションレスな1対Nの双方向通信が可能になります。
アドバタイズデータ暗号化に対する標準化
v5.4ではSIGからアドバタイズデータを暗号化する仕組みが提供されるようになりました。従来はビーコンメーカーが独自にアドバタイズデータを暗号化する必要があったのに対して、Bluetooth SIGが標準的な暗号化の仕組みを規定したということになります。これにより、PAwRによって送受信されるデータの機密性も高まります。
LE GATTのセキュリティレベル特性
デバイスがGATT通信を利用するのに必要なセキュリティモードとレベルを示すことができるようになりました。
具体的には、LE Gatt Security Levels characteristic(SLC)と呼ばれる新しい特性が追加されたことで、デバイスはSLC characteristicを含められるようになります(必須ではない)。
Coded PHYでのアドバタイズの選択
従来は拡張アドバタイズでLE Coded PHYが使用されているとき、パラメータのSの値(S=2 または S=8)を指定することは出来ませんでしたが、Bluetooth v5.4では、S=2 または S=8 を指定できるようになりました。
v5.4のユースケース『電子棚札(ESL)』
電子棚札(ESL)にBluetoothの標準規格が導入されることによって、小売業のDX化への期待が高まっています。
電子棚札自体は10年以上前から導入が期待されていたものの、これまで普及には至っていませんでした。電子棚札システムは各社が無線通信に独自プロトコルを使用している(囲い込みの)ため、導入にカスタマイズが必要であったり、そのカスタマイズ費用の負担が小売業側のハードルとなって普及の妨げとなってきたようです。
この課題に対処するため、ESL 業界の主要企業たちと Bluetooth SIGとが協力し、Bluetooth技術をベースとした『Bluetooth® ESL』という無線規格を策定し、ESL普及を進めようという意図がこのv5.4のリリースには表れています。
今後は、v5.4の追加機能である双方向通信のPAwRを利用して、例えば
- 店員が特定のラベルのLEDを点灯させて、客が商品を探しやすくする
- 閉店1時間前に全ての焼き立てパンを値下げする
- 冷蔵庫内の現在の温度を収集する
などが可能になり、小売業における『再来店促進』『買上率向上』『業務効率化』などのDX化実現が期待されています。