【6つのポイント】次世代のワイヤレス通信へ。Bluetoothバージョン6.0アップデートの要点解説
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
2024年8月27日、Bluetooth SIGの理事会にてBluetoothのバージョン6.0(以下、Bluetooth 6.0またはv6.0と表記)が承認されました。今回のv6.0では大きく6つのアップデートがありました。この記事ではそれぞれの概要を解説していきます。
v6.0のアップデート概要
Bluetooth®チャネルサウンディング:より正確な距離測定を実現
Bluetooth 6.0の目玉機能の一つが「Bluetooth®チャネルサウンディング」です。この技術はBluetoothデバイス同士の距離を非常に正確に測定できる仕組みを提供します。従来、Bluetoothの電波を使ってデバイス同士の距離を推定するには、電波の受信強度(RSSI)を利用する手法が一般的でした。ですがこの手法は精度が悪く、数メートルオーダーの誤差がありました。
Bluetooth 6.0では「位相ベース測距(Phase-Based Ranging, PBR)」と「Round-Trip Timing(RTT)」という2つの手法を利用して、デバイス間の信号の伝達時間や位相の変化を測定し、その情報から距離を算出します。
この技術は自動車やスマートロック、紛失防止タグなどのさまざまな場面で活用されることが期待されています。
たとえばBluetoothを使って自動車のドアを施錠・解錠する用途において、チャネルサウンディングの技術を使えばユーザーが本当に車の近くにいるかどうかを正確に判断できるようになります。また、紛失タグを使って物を探す場面でも、距離測定の精度が向上するため、これまでより素早く見つけることができるようになります。
デシジョンベースのアドバタイジングフィルタリング:スキャン効率の向上
Bluetooth LEではデバイス同士が通信する前に、自分がどのデバイスと通信すべきかを見極めるために「アドバタイジング」という方法で周囲のデバイスの情報を集めます。
Bluetooth 6.0ではこのアドバタイジングのプロセスがさらに効率化され、デシジョンベースのフィルタリングが導入されました。これにより、スキャンデバイスがあらかじめ設定した興味のある対象のアドバタイズのみを受信できるようになりました。この機能は不要なスキャンを減らすことができるため、結果としてスキャンの時間が短縮され、より効率的な通信が可能になります。
アドバタイザーの監視機能:省電力の強化
Bluetooth 6.0ではデバイスが近くにあるかどうかを常に監視する「アドバタイザーの監視機能」が導入されます。これにより、Bluetoothデバイスが範囲内に入ったとき、または範囲外に出たときに自動的に通知を受け取ることができるようになり、無駄なエネルギー消費を防ぐことができます。
たとえば検出済みのデバイスがすでに範囲外にある場合、上位層は処理をやめてエネルギーを節約でき、特にバッテリー駆動のデバイスでは効率的にエネルギーを使えるようになりました。
ISOAL(アイソクロナスアダプテーションレイヤー)の強化:信頼性の向上
ISOALは、Bluetoothデータを小さなパケットに分割して送信する際に重要な役割を果たします。Bluetooth 6.0ではこれまで遅延が問題となっていたこのプロセスが改善され、データを迅速かつ確実に送信できるようになりました。
従来の方式では、データを受信した側でパケットを再構成するために遅延が生じることがありましたが、新しいフレーミングモードによって遅延が削減され、特にリアルタイム通信が求められるアプリケーションでの信頼性が向上しました。
LL(リンクレイヤー)拡張機能セット:柔軟性の向上
Bluetooth 6.0ではLL機能が強化され、デバイスがサポートする機能に関する情報をよりたくさん交換できるようになりました。これにより、将来的なBluetoothの機能拡張も見越した情報交換が可能となり、Bluetooth通信の多用途性がさらに高まります。
フレームスペースの更新:通信の効率化
従来、Bluetoothデバイス間の通信では隣接するパケットの送信間隔が固定されていましたが、Bluetooth 6.0ではこの間隔を柔軟に変更できるようになりました。これにより、データの送受信がさらに効率的に行えるようになり、通信の遅延やタイミングに関する制約が軽減されました。特にリアルタイムアプリケーションやストリーミングなど、正確なタイミングが重要な場合で効果を発揮します。
【まとめ】位置測位技術で広がる未来の可能性
Bluetooth 6.0は、Bluetoothのさらなる可能性を示すものであり、特にチャネルサウンディングによってデバイス間の距離測定精度が大幅に向上する点が注目されています。
Apple Find Myやデジタルキーのセキュリティ強化の一貫としてリレーアタックに対する多層保護、そのほかにもスマートデバイス、自動車、産業用途などさまざまな分野での応用が期待されており、Bluetooth 6.0が日常生活や産業に与える影響は非常に大きいと予想しています。