【Matterはスマートホームだけじゃない】Matterの活用アイデアと最速トライアル方法
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
今回は特別ゲストとしてノルディック・セミコンダクター株式会社の山崎氏と加賀デバイス株式会社の吉原氏を迎え、注目のMatterに関する活用アイデアやトライアル方法・実際のデモについてご紹介いただきました。
Matter活用アイデアの提言/ノルディック・セミコンダクター株式会社 山崎氏
水野)
山崎さんから国内のエンジニアに向けてMatterについてのアドバイスがあると伺ったのですが、是非教えてください。
山崎氏)
皆さん、最近Matterに注目していると思いますが、「Matterを誰が推進しているのか?」という点が気になると思います。実際、以下にあるような有名企業が協力して規格をつくっています。こういう企業名を目にすると「世界中で凄いことになるぞ。」と期待される方々がいらっしゃる一方で、「巨大なIT企業に牛耳られるのではないか!?」と心配される方々もいらっしゃると思います。
Matterは、家電機器を全て共通のネットワーク規格でつなぎ、クラウド経由で様々なサービスとの連携を想定している規格です。使用されるMatterデバイスはThreadやWi-Fiで接続されることを想定されており、今現在は、主にスマートホーム向けに規格が制定されたという段階です。
ここから少し技術的な観点から見ていきますが、Matterのスタック構造は次のようになっています。
一番下の物理層で主に使用されているのはThreadです。一部、ネットワークに組み込む際にBluetooth、Wi-Fiを使用しますが、例えばEthernetを使用しても構いません。中間層は、一般的にインターネットで使用されているIPv6ベースのTCP/UDPなどが使われます。それらの上位層に位置しているのがMatterです。
つまり、Matterはアプリケーション層の一部になります。例えるならばBluetoothのデバイスプロファイルみたいなものを共通で規格化することで、ゲートウェイにあたる部分がどんなものであっても、クラウドにデータをあげることができます。
さらにMatterの面白いところは、ブリッジを組むことで、例えばZigBeeのような異なる別のネットワークをMatterの中に組み込むことも可能です。
巨大IT企業が構築した通信プラットフォームと独自ネットワークを上手く融合して展開することで、自社製品の販売を加速できるという点が、Matterの非常に魅力的な所だと思っています。
残念ながら、「巨大IT企業に引っ張られる、その下請けになるようなビジネスになる」など勘違いしている方々も多いため、ぜひこの機会にMatterを正しく捉えていただきたいと思います。
水野)
私自身も少し勘違いしていたのが「何か巨大IT企業の販売している製品をベースにモノづくりやサービス展開をしなければならない」と思っていました。本日山崎さんのお話を伺って新しい気づきを得ることができ、新しい視点でMatterの活用アイデアを考えていきたいと思います。
Matterのトライアル方法・デモ動画/加賀デバイス株式会社 吉原氏
水野)
後半は、注目のMatterをカンタンにトライアルしたい場合どうすれば良いのか?について加賀デバイスの吉原氏から解説していただきます。
吉原氏)
弊社はノルディック・セミコンダクター株式会社の代理店としてこの一年、Matterのデモ機の作製やセミナーを開催するなど、MatterのPRに尽力してまいりました。
水野)
トライアル方法について解説していただく前に質問したいことがあるのですが、Matterに関するお問合せは実際、増えてきているんでしょうか?
吉原氏)
2022年10月にMatter1.0がリリースされて以降、「Matterとはどんなものか?」という興味本位レベルも含めてお問合せは少しずつ増えてきている状況です。また、以前弊社でセミナーを開催した際も、思ったよりも多くの方々にご参加いただきました。
水野)
やはり皆さん、Matterに対して関心が高いですね。では解説をお願いします。
吉原氏)
まずは、Matterのサンプルとアプリケーションについて解説します。ノルディックが提供している『nRF Connect SDK』はMatterデバイスの開発を完全にサポートしています。
現時点では、標準版である『Matter template』やスマートロック向けの『Matter door lock sample』、照明向けの『Matter light switch sample』、電球向けの『Matter light bulb sample』、電動ブラインド向けの『Matter Window covering sample』など、各製品をイメージしたサンプルソフトを提供しています。
次に、ドキュメント関連についてです。Matterに関する文書は『nRF Connect SDK documentation』で管理されています。ここではMatter製品を実際に開発・量産する際に必要な情報を公開しています。
例えば、Matter製品生産に必要なCSAのメンバーになる方法やデバイス認証の取得方法、Matter規格への認証プロセスなど、一通りの情報が揃っています。
最後に、Bluetooth認証及びThread認証についてです。『nRF Connect SDK』の一部として提供されるBluetoothスタックとThreadスタックを使用する場合、これらに変更を加えないという条件で、ノルディックが取得している認証を継承することが可能です。
ノルディックを扱ってBLE開発をしたことのある方であればイメージしやすいと思いますが、BluetoothのQDIDとThreadのCIDが『nRF Connect SDK』のバージョン毎に取得されているため、これらをそのまま利用して認証取得が可能です。
水野)
ノルディックの良いところだと思うのですが、このようにサンプルソフト、ドキュメント、認証関連が揃っているからこそトライアルしやすくなりますね。
吉原氏)
それではここから、本日ご覧いただくデモについての説明です。以下がデモのシステム構成になっています。
今回はスピーディにデモを実現するためApple Homepod miniを使用し、コントローラーにはiPhoneを使用します。実際のMatterデバイスを想定した製品としては、加賀FEI株式会社のモジュール(チップはnRF52840)を搭載した評価ボードを使用しています。