【NGなし】ノルディック・セミコンダクター日本責任者に直接質問をぶつけて、全て答えてもらいました!前編
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。(プロフィール紹介はこちら)
今回は特別ゲストとしてノルディック・セミコンダクター株式会社の山崎氏を迎え、普段皆様が気になっているようなテーマを、NGなしで直接質問をして答えていただきました。
Q.1) 昨今の世界的な半導体不足に関して、ノルディックの状況や今後の見通しは?
水野)
昨今の部品不足、特に半導体不足の懸念が続いています。これについて貴社の状況や今後の見通しを教えてください。
山崎氏)
皆さまご存じの通り、我々の業界は全て半導体不足に陥っております。ノルディックとしては、当初2022年後半には状況が改善すると予測していましたが、現状は2023年の後半にかけて今の状態が当分継続すると見込んでいます。
その理由として特に、コロナ禍の影響により『ヘルスケア関連のセンサーデバイス』や『リモートワークに伴うPC周辺機器』等の分野でBluetoothが著しく成長しています。コロナ前と比較すると、現在の需要は二倍を超える量に増加しています。つまり、元々の半導体不足に加え、新たなニーズによるBluetoothの成長も相まって全体的な需要は相変わらず強力であり、もうしばらくは現在の供給量の中で様々な需要に対してやりくりしていかなければならないと考えています。
水野)
そのような状況下において、ノルディック独自の解消策や努力している点があれば教えてください。
山崎氏)
ノルディックは半導体の製造パートナーと良好、かつ、長期的な関係性を築けており、ノルディックのトップ自らが交渉の場に立ち、毎年少しずつでも製造量のキャパを増やす努力も行っております。
併せて、現行製品を供給するだけではなく、次世代の新製品も市場に供給することで、様々なお客様のご要望に応えられる形もとろうとしています。
Q.2) BLEのリーディングカンパニーとして、今後のBLEに対する見解は?独自の注力分野は?
水野)
私自身、ノルディックはBLEのリーディングカンパニーだと認識していますが、今後のBLEに対する見解や、今後ノルディックが注力する分野があれば教えてください。
山崎氏)
Bluetoothで今一番注目されているのはオーディオ関連テクノロジーである『LE Audio』です。従来Bluetooth Classicで使用されていたオーディオストリーミングが、より省電力で利用できるテクノロジーとしてスタートしました。
『LE Audio』は、単純な1対1通信だけではなく、1対Nで同じコンテンツ、もしくは複数のコンテンツを送ることができます。よって、例えば空港や駅のような公共交通機関などの施設では、色々な人々に対してそれぞれ適切なアナウンスを流すことが実現できると期待されています。
それに対して、ノルディックとしてもLE Audio関連ソリューションを提供し、既に国内外でLE Audio関連の開発をスタートしているお客様もいらっしゃいます。
また、現在注目のキーワードになっているのは『IoT』『Eco-System』『Multi-Protocol』です。
『IoT』については、これまでにも様々な用途向けのIoT製品が開発されてきています。一方で、製品の販売側からの視点でみると『Eco-System』が重要になっています。例えば大きなECサイトを持っているとか、より大きなビジネスの枠組みを持っているところが力をもっています。そのような『Eco-System』を持っている企業が中心となって、IoTがIndustrial(産業用)から家庭まで広がろうとしている中で、Bluetooth単独ではなく、他の無線技術も使われるようになっています(『Multi-Protocol』)。その中でも『Thread』というIPv6ベースのメッシュネットワークが使われてきており、その『Thread』を融合する形でスマートホーム分野向けに立ちあがろうとしている『Matter』規格に注目が集まっています。
Bluetooth以外の注目の無線技術『Matter』規格
『Matter』規格は、家の中の様々な家電機器を『Thread』というテクノロジーでネットワークを組み、ゲートウェイを介してクラウドにつなげることが可能です。それら様々なデバイス群を規定しているのは大きなEco-Systemを持っている企業です。
世界に較べると日本は『Matter』への注目が若干遅れ気味ですが、おそらくアメリカを中心に普及は進んでいくだろうと言われています。Eco-Systemをもつ企業が中心となってイニシアチブを発揮することで、アメリカに限らずアジアでもこのテクノロジーが普及する可能性が高まっています。
MatterはIPv6ベースで、ThreadやWi-Fiなどを使って、小さなセンサーや家電デバイスをつなぎます。一番上のアプリケーションレイヤーを共通にすることで、各社が出しているスマートスピーカーを使い、お互いに接続できるというものを2022年秋に立ち上げようとしています。
『Matter』ではThread/Wi-Fiも使いますが、併せてBluetoothも使われます。新しいデバイスを購入してきて、自宅のネットワークに組み込む時の操作をカンタンに行うためにBluetoothを利用しており、『Multi-Protocol』の重要性が高まっています。
ノルディックのロードマップは?
水野)
できればもう少しBluetoothの話もお聞きしたいのですが、今後のBluetoothソリューションおよび今後注力する部分のロードマップがあれば教えてください。
山崎氏)
現在もBluetoothを中心に力をいれており、BLEが登場したBluetooth 4.0以降、製品のアップデートを続け、今では第四世代にあたる『nRF53シリーズ』まで展開しています。今後も注力分野であることには変わりはなく、おそらく来年辺りには次のシリーズが出てくるのではないかと思います。
ただ、キーワードで挙げたように世の中は『Multi-Protocol』が重要になってきており、様々なものがワイヤレスでつながるためのテクノロジーも開発しています。
例えば、2018年にはLTE-MやNB-IoTなどのセルラー系ソリューション『nRF91シリーズ』を発表しました。さらに2020年末にはWi-Fiテクノロジーを持つ企業を買収しており、2022年にWi-Fiのソリューションを発表しました。
よって、ノルディックでは『IoT』をキーワードに、必要なワイヤレステクノロジーを全て網羅する戦略を今後も推進していきます。