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iOS版BLEアプリの作り方【第2回:アプリの企画書作成】

こんにちは。連載企画「iOS版BLEアプリをゼロから作ってみました(企画〜開発〜審査まで)」を担当させていただきました株式会社ERiの澤村です。

企画の趣旨や概要説明はこちらの記事をご覧ください。

第2回目はアプリの企画書作成についてご説明していきたいと思います。

目次

アプリ開発は「決めること」がたくさん。企画書(提案書)は「具体的に決めていく」ために作る

スマホアプリ開発においては、アプリのアイデアをもとにまず企画書を作成します。

アイデアを共有し、決めるべきことを決めていくのが企画書

今回は依頼者であるムセンコネクトさんの

  • LINBLEからBLE通信で受信したデータを好きなスマホアプリで入力できるようにしたい。
  • 例えばiOS標準のメモアプリなど、ソフトウェアキーボードが使えるアプリであれば、どんなアプリでもBLE経由でデータ入力(表示)できるというもの。

というアイデアをもとに企画書を作成しました。

補足(ムセンコネクト清水)

「家を建てたい」と言っていきなり建て始められるわけではないように、家を建てるためには外観から部屋の細部に至るまで、数え切れないほどの決め事があることは容易にご想像いただけると思います。

アプリ開発も同じで、依頼者と開発側でアイデアを共有し、そのアイデア実現に向けて大小さまざまな決め事を一つ一つ決めていく工程が必要です。それが企画書です(社外とのやり取りの場合は提案書と呼ぶこともあります)。

企画書の段階で決めること

企画書の作成にあたって、決めること、あらかじめ抑えておく点は以下の通りです。

  • 要件定義(依頼内容)
  • ご希望納期
  • 要件・機能ごとの工数
  • ソースコードの開示義務
  • 評価環境の貸与

etc

今回のアプリ開発では具体的に以下のようにして企画書の作成を行いました。

まず要件定義についてですが、

「LINBLEからBLE通信で受信したデータを好きなスマホアプリで入力(表示)できるようにしたい」

という要望から、整理して以下のように要件を定義しました。

  • いろんなアプリで受信結果を入力するために、ソフトウェアキーボードを提供する
  • ソフトウェアキーボードを提供するためには収容アプリが必要となるため、接続先デバイスの選択を収容アプリで行う

次に、定義した要件(依頼内容)が依頼者(ムセンコネクト)の要望と合っているかヒアリングします。

ヒアリングしたところ、今回は開発だけではなく「App Store公開」や「ブログ原稿作成」も作業に含めて欲しいとのことだったので、こちらも新しく要件として追加しました。

都度確認しながら「依頼内容」をしっかりすり合わせていく
補足(ムセンコネクト清水)

このように、企画書を作成する上で双方の認識に相違がないことを都度確認することも重要です。このようなキャッチボールを繰り返して企画書を仕上げていきます。特に要件、作業範囲は納期や工数の算出に大きく影響してきますので、双方の認識をしっかり合致させておく必要があります。

前述したように、アプリ開発では「決めること」がたくさんありますが、それを決めるのは基本的に依頼者です(今回のケースではムセンコネクト)。決め事をピックアップし、依頼者の決定をサポートするのが企画書であり、その決定事項を記していくのも企画書ということになります。

見積書を作成するために企画書を仕上げていく

要件の確認ができたら、要件・機能ごとに工数の見積もりを行います。このときにご希望納期が必要になってきます。

また、見積条件や納品物に影響するので、ソースコードの開示義務と評価環境の貸与についても確認します。

特に、評価環境の貸与は、無線を使用したアプリ開発では重要です

無線を使ったアプリ開発では評価環境の準備が大事

長年無線デバイスを開発してきた弊社の経験から言うと、無線を使用するアプリ開発は対向の通信相手があって成り立つため、評価環境の構築を事前に検討しておくことが非常に大切です。

今回のケースでは、「BLEモジュール(LINBLE)やiPhoneは貸していただけるのか?」を確認しました。

こうして完成した企画書がこちらです。

企画書が完成すると、この段階になって初めて正式なお見積書の作成が可能となります。概算費用、コスト感をお伝えできるようになるのも企画書の作成後となります。

補足(ムセンコネクト清水)

「概算費用を算出する」「見積書を作成する」ために必要なのがこの企画書です。

見積算出のために必要なのが企画書

アプリ開発のご相談では、すぐに「概算費用が知りたい」とお問い合わせいただくことが少なくありません。お気持ちは重々理解しておりますが、企画書で決めた内容によって見積金額の桁が1つ、2つ変わってくることも珍しくないため、例え概算費用の算出であっても企画書作成を避けて通ることはできません。

裏を返せば、企画書を作成するにあたって「最低限決めるべき要件」が定まっていない状況では、まだ見積算出できる段階ではないとも言えます。まずは「最低限の決め事」を決めていただくのが先決であり、その決め事をサポートしながら企画書を一緒に作っていくのがムセンコネクトの「無線化相談・無線化サービス」です。

アプリの企画書作成まとめ

以上、第2回「アプリの企画書作成」について解説しました。

  • 依頼者のアイデアをもとにしてアプリの企画書を作成する。企画書では「アプリで何を実現したいのか?」を明確にする。
  • 要件の定義に加え、作業範囲、スケジュール・工数、納品物の内容、評価環境などを確認する。
  • 企画書をもとに依頼者との間に認識の齟齬がないか確認する。依頼者とのキャッチボールを繰り返して「決めるべきこと」を一緒に決めていく。
  • 企画書が完成したら、正式な見積が可能となる。

企画書作成は、アプリが”何を”実現したいのかを明確にするフェーズで、それを”どう”実現するかは、次のフェーズ(仕様策定・設計)で詰めていきます。

第3回目は「アプリの仕様書作成」についてお届けします。

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